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ジュラン・ラプトリク

「実に興味深い能力だったよ!!」


 襲ってきた男はまるで賞讃するような物言いで、俺のいる方向に近づいてきた。戦闘を継続する意思は感じられないものの、依然として不適な笑みを浮かべているため警戒心を保ちながらこう言った。


「貴様、いきなり襲ってくるとは一体何の真似だ!!!」

「いやすまなかった。随分手荒な挨拶をしてしまったね……僕の名前はジュラン・ラプトリクだ。よろしく」


 俺が問うとジュラン・ラプトリクと名乗るその男は先程までとは打って変わった丁寧な振る舞いで謝罪をしてきた。俺は武装状態を解除し、先程までの行動について詳しい話を聞いてみる事にした。


「改めて聞くが何故いきなり俺を襲った?」

「君の竜の力に興味が湧いてね。少し力を試させてもらったんだ」


正直、能力が気になっていたとしてももう少し穏便に済ます方法があっただろうと心の中では文句を言いながら、俺は男に質問を続ける。


「それは分かったが俺の名前、そしてここにいる事を何故お前が知っていた?」


 最初にもした質問と場所を特定できていた理由を問い詰めると、ジュランは観念したように肩をすくめると今に至った経緯を話し始めた。どうやら彼の話によれば上野で開催されている世界の大恐竜展に参加するべくアメリカから来日したそうだ。その帰り際に黒いローブの少年に遭遇し、俺に関しての情報を聞かされ興味を持ったので秋葉の街を訪れたそうだ。 


 「大体把握した。正直お前の行動に対して言いたいことは色々ある……が!今回は特別に許してやろう!」


と厨二病魂を全力で注ぎ込んだポーズと香ばしいセリフを言い放ちその場を去ろうとした。が、帰ろうとしている俺の後をジュランはひたすらに追行してくる。


「さっきから何なんだ! まだ俺になんか用があるのか?」


しつこく追行してくる彼に少し苛立ちを覚え声を荒げて質問した。


「単刀直入に言うと君の仲間に加えて欲しい」

「嫌だ!」


俺は即答した。当たり前だろう、いきなり自分の事を襲ってきた奴に「仲間に加えて欲しい」と言われて「いいぜ、よろしくな」と応える奴がいるだろうか……流石の俺もそれくらいの危機意識は持っている。


「そうか……断られちゃうか……ならしょうがないね?」


 そう言うと彼は再度Ⅾ-watchと化石を取り出した。


「おいおい何する気だよ!?」

「断られた腹いせに秋葉の街を破壊しようかな~って」


 ガキの癇癪かんしゃくのような言い方でとんでもないこと言いだしやがって……!と内心で頭を抱えて絶句している俺に、男は視線をD-watchとの間で往復させながら顔をニヤニヤとさせている……。俺は10秒ほど沈黙して大きくため息をついた後、渋々奴を仲間に加えることに決めた。


「あーーくそ!分かった。勝手にしろ」


 俺はそう投げやりに答えた後、連絡先を交換し明日の集合場所を伝え帰宅しようとした。が、またもや奴は俺を追行してくる。


「まだなんか用か!!」

「いや~とても言いづらいんだけどさ?今日ホテル取ってなくてね~、泊めてくれない?」


 申し訳ないとはまるで思ってい無さそうに言い放ったこいつに、俺は再びため息をつきながらもジュランを部屋に連れて帰ることにした。ひとまず入口で待たせておいて先に部屋に戻った後は会議室にいた早乙女さんに事情を説明し、ジュランを館内に入れることには了承をもらえた。しかし退室しようとした俺は引き止められ、秋葉原の建物を破壊したことを正座をさせられて小一時間ほど説教を受ける羽目になった。俺のせいじゃないんだけどな……


 足が痺れて小鹿の様によろよろと部屋に戻った俺を出迎えたジュランは腹を抱えて笑っていた。俺はこめかみにビキッと血管を浮かせ拳を握りしめるもなんとか堪え、ひとまず二人で大浴場にいき、汗を流した。そのあとは夜通し恐竜の話やドラゴンの話で盛り上がり意気投合していき、朝ご飯を食べた後昼間の時間はお互いに寝て過ごした。


 そして時刻は夜19時。今日は俺たちレジスタンスに警備が割り振られた日だ。俺は迷彩服に着替え部屋を出る準備をしている。ジュランもメンバーに加わったので作戦に参加することになった。最終確認のため会議室で話があるそうで準備を終えた後、部屋に向かった。

 

 会議室の扉を開けると俺達以外の作戦参加者は皆既に席に着いており、遅れたことへの謝罪をして席に着いた。


「皆様お集り頂きありがとうございます。本日は日本政府、特別事態対策官並びにCIAの方よりお話を頂きます。お二方どうぞ」


そう言うと慎一郎さんと特別事態対策官と思われるスーツの男の人が入ってきた。おいちょっと待て……親父じゃねえか!昔から親父は仕事について一切教えてくれることは無かったが、まさか出張でほとんど家にいない理由がこれだったなんてな……。俺はこれまで驚きと常識外の連続だったせいか、一周回って冷静に受け止めていた。


「皆様本日はお集り頂きありがとうございます。特別事態対策官、龍ヶ崎 健二と申します。政府を代表して……ん?そこにいるのは……?おい歩、歩じゃないか!」


 親父は後方の席にいる俺に気づき挨拶を中断してまで手を振ってきた。盛大に周りから注目され恥ずかしさで顔から火がでそうだ。勘弁してほしい、マジで。うちの親父は周りを気にしないことがたまに傷だ。親父らしいといえば親父らしいが……。そのあとは早乙女さんに抑えられて、軽く挨拶をした後慎一郎さんからも手短に挨拶があった。


「お二人ともありがとうございました。続きまして本日の担当メンバーを再度ですが読み上げさせて頂きます。聡明なる光より安倍光明さん、九光那月さん、辰凪 風さん、レジスタンスの皆様、紅の翼より御騎みき 災華さいかさん、そして最後に私たち萌え萌え桜からわたし早乙女 八重、魔将院ましょういん じんの計10名です」


先日渡されたプリントをよく確認してなかったが、風ちゃんは光明さんのチームのメンバーだったのか……そう色々考え事をしているうちに最終確認も終わり、少しだが親父と久しぶりに話した後、俺達は外に出た。

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