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秋葉原連合会議

 俺は秋葉原のゲーマート前にいた。秋葉原の街は何度か来たことはあるがやはり賑わいが違う。地元にもそれなりにオタクショップが密集する場所はあるが、やはり田舎だということもあり人は少ない。それに対してここはさすがオタクの聖地と言われるだけあって目に止まる店も多い。メイド喫茶もたくさん点在しており、「如何ですか?」と何度も声をかけられた。今期見ているアニメの宣伝パネルも至る所に貼られていて意識していなくても目に入ってくる。オタク文化で溢れている街、それが秋葉原だ。


 そんな事はさておき、〝血染めの竜と秘められし竜爪〟 最新14巻を読める事に心躍らせながらアニメショップであるゲーマートに足を踏み入れた。店内に入ると、俺の視界の端まで新刊の漫画が所狭しと並んでいる。どうやらライトノベルは2階にあるようで俺は階段を登りフロアを移動した。レジ前に所狭しに並べられたライトノベルの新刊達、その中に当然の如く秘められし竜爪の最新刊が並んでいる。


 俺はそれを取ろうと伸ばした手が、同時に隣の人と重なった。咄嗟に申し訳ないと思った俺はお先にどうぞという思いで、手を引っ込めて一礼した。しかし俺の謝罪に対して無言で返され、それどころか睨みつけられたあげく新刊を買わずに退店してしまった。


 そいつは黒いローブを身に纏い、銀色の髪を後ろで結んでいる。その後ろ姿は女性のように見える……だが男だ! ……ゴ、ゴホンッ、確かに申し訳ない事をしたが愛想がない事に酷く憤りを感じつつも、新刊を購入して店を後にした。


 目的を達した後まっすぐに自分の部屋に戻った俺は、夕食までの時間を購入した新刊の読書と部屋に設置されたTVを観て潰した。ロードショーの内容はジュラシック・クロックという洋画で過去に戻ってしまった主人公が恐竜に襲われる中どう生き抜いていくのかという話だった。ドラゴンは勿論好きだが、こちらの方も少し琴線(きんせん)に触れており、こんな事態になっていなければ上野の博物館で現在開催されている世界の恐竜展にも足を運んでみたかったものだ。


 そんな事を考えているうちにもう時刻は17時、俺は部屋の鍵を施錠し食堂へと向かった。館内には俺達だけじゃなく、思っていたより沢山の能力者がいるようで食堂も賑わっていた。俺は唐揚げ定食を選んで受け取り端の方にある席に座った。黙々と食べ進めていると少しおどおどとした様子の少女が躊躇いがちに俺へ話しかけてきた。


「あの……正面……宜……しいでしょうか?」


 透き通りそうな程の淡い碧色の瞳に綺麗なエメラルド色の長い髪、服装は白い長袖ワンピースで胸元には碧色のペンダントを付けている。身長は140cm後半くらいで少し低めでとても可愛い。……いや、断じて俺はロリコンなどではないぞ! と思わず頭の中で自分にツッコミを入れていた。母性本能が働くとはこの事を言うのだろうか、いやこの場合俺は男だから父性か……? 彼女に座ってもらってから話しかけてきた理由を聞いてみたところ、いつも端で食事をしていて今日はたまたまその卓に俺がいたから声をかけたらしい。


「君、名前は?」


「わ、わたし…ですか?わたし……辰凪(たつなぎ) (ふう)です」


 少女は人差し指を少しもじもじとしながら戸惑いがちに名前を教えてくれた。俺はなんとなく少女が人見知りだと察した。いつも端でご飯を食べるのも恐らくそれが理由だろう。質問攻めにするのも悪いと思い、こちらからは軽く自己紹介だけで済ませ手早く食事を終えると挨拶をして俺はその場を後にし、部屋に戻って迷彩服に着替え直して会議室に向かった。


 そして時刻は19時、中に入ると最初に入った時とは違い大勢の人が席に着いており、美麗と恵の姿もあった。


「あれ? 歩君じゃないですか~!」


 なんと昨晩助けてくれた那月ちゃんもこの会議に参加しに来ていたのである。確かに俺は昨日別れる前秋葉原に向かってることは伝えてなかった。まさか目的地が同じだったなんて……那月ちゃんがいるって事は……辺りを見回すとやはり光盟さんもいた。俺は2人に挨拶を済ませて美麗と恵の隣の席に着いた。先程までは気づかなかったが、食事で一緒になった風ちゃんも端っこにちょこんと座って会議に参加していた。なんというかマスコットみたいな可愛さだ。


 そうこうしているうちに早乙女さんがマイクを持って司会として正面モニターの下に立ち会議を始めた。


「皆様、今日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。神田基地を代表して早乙女 八重がご挨拶をさせていただきます。よろしくお願いいたします」


 彼女は始まりの挨拶と共に指示棒を右手に持ち、モニターの画像を指しながら説明を開始した。


「まずはこちらをご覧下さい。最近の千代田区周辺でのエニグマの目撃回数です。日毎に目撃頻度は増え、最近ではほぼ毎日情報がございます。そしてこちら……」


 彼女がそう言うとモニターの画面が切り替わり、その内容に一同騒然となった。そこに映っていたのは数々の神社の要石が破壊された姿だったのだ。


「見てもらって分かる通り、都内の神社の要石が次々と破壊されています。皆様、これは何のための要石かご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?」


 その質問に対し光盟さんがゆっくりと手を挙げて返答する。


「平 将門の呪いを封じた北斗七星の結界陣のうちの6つだ。私の祖先がかつて呪いを封じるために設置したと聞いている」


「その通りです……この話はあくまで都市伝説みたいな話としてインターネット上で囁かれているものだったのですが、これを見てください」


 そう言うとまたモニターが切り替わり、今度は都内のここ最近の行方不明者の数が表示されていた。


「見ての通りです。要石が破壊され始めてから行方不明者の数がどんどん増えています。そして私のチームからも……これはあくまで仮説として聞いてほしいのですが、エニグマがもし、過去の人物が残した黒歴史と判定できるものからそれを具現化できる能力があったとしたら……」


 彼女の考えを整理してまとめるとこういう事だ。昔の人が残したなにかが今では都市伝説の一つとして語られていたり物語として語られていることが、黒歴史として具現化される可能性がある。つまり、要石が全て破壊されたなら平 将門の怨念が具現化して人を襲うのではないか、ということだろう。


「その封印に使われている要石の残り一つがこの神田明神に存在する……そういう事なのですね……」


光明さんは腕を首に当てながら考えを出し結論を出した。


「はい……皆様に集まって戴いたのはのは他でもありません。この要石の防衛に協力して欲しいからなのです」


 先程までは騒然としてた皆だがこのデータと迫っている危機をはっきりと認識したことで真剣な顔つきになり、引き締まった空気に変化した。


 その後は日毎の防衛、巡回場所と時間を記載されたプリントが渡され解散となった。俺達はレジスタンスは本日の担当には割り当てられておらず、明日の夜中の担当となっっていた。


 俺は美麗と恵と一緒に明日の流れを確認し、夜の秋葉原の街を体を動かしがてら散歩をすることにしてジャージ姿に着替えてから赴くことにした。

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