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超絶可愛い魔法少女

「あら、そっちから出てきてくれるなんて暗奈、超ラッキー♡♡♡」


 戦闘態勢に入ると同時、正面でこちらと同じく急停車した車の後部座席から恐らく先程姿をよく確認できなかった1人の少女が俺たちの前に姿を現した。俺はその聞き覚えのある声、個性的な服のセンスを視界に収めると思わず脱力しかけてしまった。


 少女はいかにもぶりっ子のような手のひらを丸めて頬に手を当てたポーズをしている。服装は〝私超可愛い〟と書かれた黒と紫のラインが入って銀色の星型のラメ加工が入ったTシャツに黒いミニスカートで紫色のリボンを両側に付けている。身長はとても低く140前後だろうか。髪型はツインテールで茶髪だ。右手にステッキを持っている。


「お前、夜舞(やまい) 暗奈(あんな)じゃないか!」


 そう俺はこいつを知っている。夜舞 暗奈、栞のコスプレ仲間だ。何度かコスプレイベントで顔を合わせている。


「あんたがもしかして龍ケ崎歩ぅ? 暗奈あんたとは初対面なんだけどぉ、馴れ馴れしくしないでくれるぅ?」


 どうやら俺の事を覚えていないようだ。確かに泉よりも印象は薄いと思うが、イベントのときは毎回挨拶させてもらったり、自分宛の差し入れを貰ってたりしたので覚えていないのは明らかにおかしい。


「まあいいや、貴方たちさぁ秋葉原に向かってるんでしょ? 今来られるのはエニグマ様の偉大なる計画の邪魔になるからぁ、帰ってくれない?」


「僕達にも目的があるからね。悪いけど、君の言葉には従えないな」


 帰ってと要求してくる暗奈の言葉を恵はきっぱりと断った。


「あ〜断っちゃうんだぁ〜? じゃあ龍ケ崎 歩以外のお仲間はみんな地獄送り決定~!てか妖、さっさと出てきてなさいよぉ。いつまで車の中で優雅にしている訳?」


 暗奈はそう言って不満を欠片も隠さず、さっきまで乗っていた車両に乱暴に蹴りをいれて中の人間に声をかける。そして車のドアが開き、助手席に座っている美人な男が姿を見せた。


 身長は180センチ前後くらいで、女性と間違えかねないなと思ってしまうほどだ。


「暗奈、少し勘違いがすぎますね。私は遼様の忠実なる下僕、遼様のためにこの者達の足止めを遂行するのであり、貴方の指図される謂れはない。しかし、断られたのでは仕方ありませんね」


 どうやら暗奈はエニグマから刺客でもう1人の男は組織ウルフからの刺客のようだ。やはり切矢とエニグマの2人は組んでいたのか。


「最後にあなた方に忠告します。今すぐこの場から引き返して家にお戻りなさい。これを断るというのなら死を了承したと見なします。龍ケ崎歩だけは殺しはしませんが……」


 男は俺達に最後通告をしたようだ。しかし、それくらいで引き返す覚悟ならそもそもここにはいない。


「美麗、恵、行くぞ!」

「なんで歩が仕切ってるのですの、まあいいですわ、いきますわよ!」


 美麗にリーダーみたいに仕切ってみたことにツッコミを入れられたがそこはスルーして戦闘態勢に入った。


「やはり警告では引き下がってはくれないようですね。暗奈は足を引っ張らないように頼みますよ」

「うるっさいなぁー指図するなっつの!」


 暗奈はそう言いながら右手のステッキを顔の前にかざして、真ん中の紫の結晶にキスをした。


「変身! じわじわと侵食する毒の美しさにあなたも魅了されちゃって♡♡♡魔法少女 アンナ!」


 そう暗奈がいうのを聞き思わず足を止めてしまった。そして目の前で彼女は体が空中に浮かび上がり、服装が徐々に変化していき、数秒の後に変身が終わっていた。


 俺はこの変身を見たことがある。暗奈の〝てぃんくる9〟の推しキャラの1人、秋桜(こすもす) 蝶花(ちょうか)の変身だ。


 背中には薄紫色の蝶の羽。紫色の蝶リボンが左右についており、メイン色は紫で白いラインが入ったワンピース。間違いないあの子の黒歴史のモデルは〝魔法少女てぃんくる9〟のものだ。


 暗奈の技に関してはどんな攻撃が飛んでくるか大体の予測ができる。手の内を知っているこのアドバンテージはかなり大きい。彼女の攻撃に注意さえすれば、無力化するをとも可能だ。


「加速支援魔法!〝アクセラレート〟! 君たちに速度をメインとして身体能力を強化する魔法をかけた! 存分に暴れてくれ!」


 恵の詠唱とともに、美麗と俺に身体能力の魔法がかかった。美麗もこの魔法のおかげで俺との戦闘の時、あんなに身軽になっていたのか。


 そう思っていたのも束の間、暗奈が空中に飛び上がる。


「ごちゃごちゃうるさいんですけどぉ、さっさと死んじゃいなさい〝ポイズンアロー〟」


 そう暗奈が詠唱するとステッキが弓の形に変化し、毒の入っている注射器型のカプセルを発射した。


「〝竜爪〟」


 腕を竜化した俺は、連続で撃ち出される毒カプセルの射撃を駆け回って躱していく。恵の支援魔法のおかげで前回よりも体が軽いおかげで相手の攻撃を避けやすい。


 読み通り、暗奈は仲間がいるため、本来の毒の全体攻撃をむやみに使えないようだ。巻き込む事になってしまうからな。だが、警戒しておくに越したことはない。


「慎一郎さん!暗奈は毒の攻撃を得意とします。万が一の為、ガスマスクの用意を!」


 そう後ろの車で、拳銃を構えている慎一郎さんにインカムで連絡する。


「ああ、分かった。用意しておく。必要な時に言ってくれ」


 これで万が一への備えも万全だ。


「なんで暗奈の攻撃を知ってる訳?まじキモイんですけど、さっきもあんた私を知ってるみたいだったしもしかしてストーカー?横に邪魔な奴がいなかったらもっと派手やれるのに、ハァ~まじむかつく。ならこっちはどう?」


 暗奈はそういうと、弓に変化したステッキを元の形に戻し、再び紫の結晶にキスをし詠唱をした。


「キャハ♡♡♡〝 メイクアップ〟ダークオーラ!」


 そういうとステッキの先から禍々しいオーラが飛び出し暗奈を包み込み、一瞬の間に彼女の服装を全身黒色に染めた。俺はこんな能力を知らないし、〝てぃんくる9〟の設定にも存在しないはずと内心で焦った。


「エニグマ様から授けていただいたこの力、特別にあんた達に見せてあげるね♡♡♡〝ダークフレイム〟!!!」


 そういうとステッキの先に黒いオーラに包まれた禍々しい炎が出現し、連続で俺の方向に撃ち放ってきた。


「それ、それ、それぇ! いつまで逃げ回ってるつもりぃ!」

「歩、いつまでも回避ばかりせずにさっさと本体を狙いなさい!」


 攻撃しない俺に痺れを切らしたのか、車の影で銃を構えて様子を伺っていた美麗がスナイパーライフルを構えて空中に浮かぶ暗奈に狙いを定め、射撃を開始した。


 バン!と美麗が放った銃声が響く。俺はとっさに暗奈を庇おうと、彼女の目の前に飛び出し、攻撃を庇った。


「グハッ……」


 俺の胸付近に銃弾が命中し貫通した。ドラゴンネイルなしにもろで喰らったため傷はいずれ治るが瞬間的にダメージはでかい。


 痛みに耐えながら、地上に着地し胸部の出血を、腕の炎を押し当て意識して焼くイメージをする。少し強引な止血をした。


「歩、何してますの! あの女は敵ですのよ!」


 慎一郎が車から包帯を投げ、受け取った美麗が俺の傍に駆け寄ってきた。


「あいつは……腐っても泉の友達だ。だから傷つけることは出来ないんだ……」


 俺は美麗に包帯を巻いてもらい、応急処置をしてもらった。


「キャハ♡♡♡まじウケるんだけどだからあんたなんて知らないって……あ、ああああああああぁぁぁ」


 暗奈は言葉を途中で途切れさせ急に頭を抱えて苦しみ出した。


「早く……逃げて……龍ケ崎歩……暗奈が覚えているうちに……」


 やっぱり彼女は俺の知っている暗奈だ。しかし未だ操られている状態が解けたわけではないようで、正気は長くは保てなさそうだ。


「全く、やはり貴方一人では無理のようですね。私が全て片付けるとしましょう。〝憑依〟妖狐」


 まともに戦闘を続行できそうにないその様を見兼ねたのか、車の前で見物していた男が憑依と宣言すると、狐のような尻尾が9本背に出現し耳からも狐の耳が生えまるで別人のような姿に変化した。


「まだ名乗っていませんでしたね。私は怪鬼 妖。切矢様の忠実なる下僕でございます。貴方方に恨みはありませんが我が主のためです。恨まないで下さいな。そして見せてさしあげましょう! 私の華麗なる妖怪の力を!」

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