俺は現在進行形厨二病
「貴様、この俺を怒らせたこと後悔してももう遅い! その罪、命の灯火をもって償うがいい!」
その男は口ずさみながら、小刻みに手足を動かしポーズをとっている。 一般人からすれば、とてつもなく恥ずかしいセリフが、昼休みの校内中庭に響き渡る。
「あいつ何やってんだ? ウケる、マジで友達いなさそう」
校舎の通路からその光景を目にした二人の男子生徒は、クスクス笑いながらそう言い捨て去っていった。
「フッ……貴様らには到底理解できん次元の話だ!」
俺は呆れた顔で言い放つ。
俺の名は龍ケ崎歩。 自分で言うのも難だが、細身だが引き締まった体付き 。 黒髪をワックスで整え、厳つい雰囲気を演出している。 いや、そうではない。俺は生まれながらに龍の血を受け継いでいるからこそ、この髪型にも現れているのだ。 右手に巻かれた包帯は封印のため。 俺の中に眠る龍の血が疼き、暴れ出さぬようにするためのものだ。
最後に、あまり重要なことではないが、俺は石原市にある私立石原大付属高校に通う高校二年生。 自分で言うのもなんだが、日々悪の組織と戦っている……という設定だ。
周囲からは「厨二病」や「精神異常者」などと馬鹿にされるが、まったく気にしていない。 なぜなら、自分の好きなものに誇りを持っているからだ。
そんなことを頭の中でアニメの冒頭説明シーンのように思い浮かべながら、俺はベンチに座り、学ランのポケットから小説を取り出した。
『血染めの龍と秘められし竜爪 13巻』
いかにも厨二病くさいタイトルだ。 この場所でこの作品を読むことが、俺の学校生活における唯一の楽しみ。
物語の内容は、龍の力に目覚めた主人公が、その力を悪用する者たちを薙ぎ倒していく王道のファンタジー小説。 こいつは俺がこの趣味に目覚めるきっかけとなった作品であり、いわば相棒だ。 ……おかげで友達はいない。
いや、仲の良かった奴はいた。
過去形なのは言わずもがな。
この趣味に愛想を尽かされたのだ。 そいつは今も同じ高校にいるが、入学以来一言も言葉を交わしていない。
泉菜栞。
小学五年生からの幼なじみだ。 日曜朝に放送されていた『魔法少女てぃんくる9』というアニメが好きで、子供の頃はよく話を聞いていたし、魔法少女ごっこにも付き合っていた。
だが、あいつもいつまでも子供ではないということなのか。 高校に入ると俺に対する態度が変わり、かつての趣味だった『てぃんくる9』の話をすることもなくなった——