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それでも

それでも私なので

作者: 三ツ巴 マト

お待たせしました。「それでも彼が好きなので」後日談です。そちらを読んでいない方はそちらを先に読んでいただいた方が楽しんでいただけると思います。

みなさんこんにちは。オレノアです。



学園を卒業して、今は王宮で働いています。女性の社会進出が進むなか、この世界でも女性の働き方が見直されています。これから、王宮でも女の人が働きやすいように環境を整えたりするのがお仕事です。そんな大事なことを私なんかがやっていいのでしょう?まぁ、任されたのでやりますが。やりがいはありますし。


この改革はエミール王子が本格的に政治に関わっていく上で大きな目標の一つとしています。つまり、王子が私の上司。なんてこった。けど、王子の補佐役として働き始めたジュークと一緒なので楽しいです。なんと、執務室が一緒。少々開放的な大きな部屋を半分こ。部屋が豪華で、こういう時に異世界なんだと思います。


部屋が一緒で気が散らないかとも思われるでしょう。しかし、忙しい。それに、人は出入りするし自分も動く。そんな暇なし。


それに王子の結婚式が終わるのを待っていたかのようにジュークのところに嫁にいかされましたから、家に帰っても顔を会わせられます。ちなみに、この結婚は、親の方でも色々手を回されていて、あっという間でした。うれしいので構いませんが。







ある日、国外に出張することになりました。もちろんジュークと一緒。外交使節とかいうやつです。行き先は私が留学していた国なので、留学経験を活かせってことでしょうか。


馬車に揺られてガトゴトと、隣国に向かいました。到着して、王宮に案内されました。軽く身支度をととのえて、王様に謁見して、ご挨拶。その後は会議などの予定が組まれています。


到着した後は夕方まで休んで、そのあとは歓迎のパーティーに出ます。滞在期間中はこのようなパーティーに何度か参加するのです。このために祖国からドレスも持ってきます。重いです。かさばります。面倒です。しかし、国の代表なので下手な格好は出来ません。


まあ、可愛いドレスを着るのは楽しいです。疲れますが。キラッキラに着飾って、ジュークと会場に入ると、中にいた人たちが一斉にこちらを見ました。主賓ですからね、目立ちますよね。



沢山の人と挨拶をしました、大体の人達は、ジュークに話しかけ、ジュークが私を紹介するといった形です。例外は、


「オレノア様!お久しぶりですわね!」


留学時代の学友です。彼女の名前はハンナさん。


「ハンナ様、お久しゅうございます。その節は大変お世話になりましたわ。」


「えっ、本当にオレノア様?口調が違う??もっとぶっきらぼうじゃなかった??」


「よそ行き用ですから。」


失礼な。私だって猫は被ります。それにここは自国じゃないので、言動には気を付けないといけません。だから、ハンナさん、そんなに驚かないでもらえますか。それと、ジュークも珍しいものを見るような目をするのをやめてください。


「そうですか……。ところで、他の人達とはお会いしましたか?オレノア様がいらっしゃると聞いて、みなさん楽しみにしていらっしゃいました。」


「いいえ、お見かけはするのだけどお話は出来ないのですわ。」


そうなんです。さっきから、知った顔を何度も見かけるのですが、みんな去っていくのです。

ほら、そこにさっきからいるケイト様も、目をあわせてくれないんです。そんな様子をハンナさんに説明すると、


「あーー。オレノア様の留学中の姿と今の姿が違いすぎて、同一人物だと思いたくないんですのよね。」


何故でしょう。すごく納得している私がいます。


「へぇー。オリーの知り合いに会わないと思ったらそういうことだったのか。僕はてっきりオリーが留学中に孤立していたからだと思っていたけど。」


なんかジュークも納得しています。


「オレノア様は孤立しているというよりも浮いているって感じでしたからね。転入初日に渡された大量の脅迫状で芋を焼いていたのは今でも学校で伝説なんですのよ。」


あれですか。一度やってみたかったんです。漫画の男の子が貰った大量のラブレターを焼いて芋焼いているのを前世で見たことがあるのです。でもさ、ハンナさん。ジュークの前でそれを暴露しないで欲しかったです。ほら、今、私の手を握っている彼の握力がちょっぴり大きくなっています。


「ジューク、どうかしましたか?」


「うん、後でお話ししようね?」


その後は猫を被ったまま普通にパーティーを楽しみました。ジュークとおどったりしました。楽しかったです。




その後、


「オリー?質問していいよね?」


「じゃがバターは美味しかったよ?」


サツマイモは手に入らなかったのです。


「そういうことじゃない。前に脅迫状は証拠だからとって置くって言ってなかった?なんで燃やしているのかな?」


「量が多すぎた。」


「はぁ?」


「ありすぎて、寮のベッドが埋まった。仕方ないから処分。一応、送って来た人の名前は全て控えてある。」


「そこで燃やす理由は?」


「手紙は個人情報多い。ゴミに出して誰かに悪用されたら困る。それに見えるところで燃やせば見せしめになる。」


「わかった。じゃあ、芋を焼いた理由は?」


「エネルギーの有効活用。」







翌日、お偉いさん達との会議。私は使節団の副団長。もちろん団長はジュークです。


この世界の風習で、どんなにかしこまった会議でもその少し前に集まってお互いに雑談を楽しむ習慣があります。なので今回も三十分くらい前に会議室に向かいました。中に入ったらすでに相手のみなさんがお待ちかねです。




そして、それは起きました。私がジュークの後に続いて席に座ろうとしたときです。


「おい、女。なんで女がここにいる?」


隣国のお偉いさんのおっさんです。あれですね。喧嘩を売られるってやつですか。ジュークが一瞬眉をひそめましたが、私の方を見ると、諦めたような顔をしました。後で聞いたところ、私から威圧オーラが出ていたそうです。


「失礼、わたくしこう見えても使節団の一員でございます。ですので会議にも参加させていただきますわ。」


男尊女卑の残るこの世界。これくらいのあたりは覚悟しています。


「はぁ?使節団の一員?女を入れなきゃいけないなんて、そちらさんの国は人員不足なんだねぇ。」


思ったんですが、嘗められているとはいえ、私は使節団員。お客様です。なのにこの言葉の悪さはかなり心配です。


「いえ、わたくしはあくまで実力で雇われていると思っております。女性目線でしかわからないこともありますから。」


「あぁ?あれか、男女平等ってやつか?俺は大賛成とまではいかないが、それなりに受け入れているつもりだぜ?だけどさ、平等だっていう割には、あぁしろだの、こうしろだの五月蝿くねぇか?どこが平等って言うんだよ。」


つまり、女性用の施設や制度の改革がめんどくさいって言っているんですね。



ふざけるな。



これはかなり侮辱されていませんか?この人が無自覚なのが余計ムカつきますが。



「履き違えるな。平等を。」



被っていた猫は去って行ってしまいました。ちょっと言葉使いが素に戻ってきてしまいました。でもいいです。このまま続けてしまいましょう。


「女性が働くために負担がかかるのはよくわかる。しかし、それは不平等なわけない。元々の制度が男性向けのものなのだから、不平等なのは元々の制度。平等を重んじるなら、それくらいの改革は当たり前。」


言ってやりました。偉いぞ私。他国のお偉いさんにも物怖じしませんでした。ジュークが私の手をスリスリしていますが、気にしない。私は正しい。


おっさんは驚いたようで、固まってしまいました。弱っ。



「失礼。彼がご迷惑をかけたようで。どうかここは見逃してくれませんか?」


沈黙を破ったのはおっさんでも、ジュークでも、もちろん私でもなく、別の隣国のお偉いさんでした。おっさんとは違い、ちょっとダンディーな大人の雰囲気が漂うおじ様でした。私は逃げた猫を捕まえて来て向き合いました。


「別に、構わないですわよ。まだ会議前ですもの。」


「無理して猫を被らなくても良いですよ。実は家の娘が、昨日のパーティーで貴方が猫を被っているのを大変気味悪がって、私に貴方に気を付けるように言ってきたんですよ。」


あっ、この人ケイト様のお父様ですね。ケイト様が私のことをどのように伝えているか気になるところですが、まぁいいです。


「そうですか。」


「ええ。それと彼も悪気があったわけではないので本当に気にしないでください。どうも最近奥方と上手くいっていないらしいんですよ。」


「おい、余計なこと言うなよ!」


おっさんは知られたくないことをおじ様に言われてしまったらしいです。おじ様は慌てるおっさんを気にしている様子はなく、目を細めて私を見ています。知っている、コレは人を見定める人の目です。


「奥様との関係が不安定?浮気でもしたんですか?」


「俺はアイツ一筋だ!」


「まあまあ、落ち着きなさい。貴方はケイトと同級生だったそうですね。ではご存知ないですか?我が国の学園の東の鐘楼の伝説を。」


「あれですか?東の鐘楼の下で告白すると叶うとかいうやつ。」


「えぇ、それです。彼はその伝説のモデルなんですよ。それくらい彼は奥方を愛している。奥方も情が冷めたわけではないらしいんです。」


「なんとあの話の!」


なんと、このおっさんは愛妻家でしたか。確かにおっさんはおっさんですが、昔イケメンだったであろう面影が今も残っています。なのにすれ違ってしまったのでしょうか?


「はい。ところで貴方は故国では王子殿下達の恋のお悩み相談を受けていたそうですね。彼もなんとかなりませんか?」


本題はそこですか。私の能力試すついでに他所の家庭環境改善ですか。相手がお偉いさんなので簡単には断れません。ジュークの、「オリー頑張って!」という目をみて、


はぁーーーーーーーーー。


私は長いため息をつくと、


「まずは詳しい話を教えてください。」


協力することにしました。



そうして話を聞けば、



すれ違いにすれ違って拗れ拗れ。



えっ、なにコレ、面倒くさい。


まぁ、協力すると言ってしまったからには投げ出す訳にもいかず、とりあえず素直になって想いを伝えろ的なことを言っておきました。



ちゃんとその後に会議はしましたよ。




その後の滞在期間中、おっさんの話を聞いてはアドバイスをするのを繰り返した結果。おっさんと奥さんは仲直りをして、ラブラブになっていました。いや、戻るの早くないですか?


でも、よく頑張ったね、とジュークが褒めてくれたので良いことにします。


おっさんは何度も頭を下げてお礼を言ってくれました。あの時の謝罪もしてくれました。多分この人は本当は凄くいい人だったんだと、思います。それがネット小説も真っ青なすれ違いをしていたから精神的に追い詰められて横暴な態度をとるようになってしまったのでしょう。私と話してからおっさんが優しくなったと、他の人にも感謝されました。


仲直りできたおっさんはスッキリした顔をしていました。よかったよかった。






お国に帰ってその話をしたら、マライア様が私らしいと言ってくれました。



王子に同じ様に話をしたら、遠い目をしていました。オイ。

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