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まだかなぁ!まだかなぁ!!
新入り案内が楽しみ過ぎる俺こと、ふぇんりる:@は予定の午後より1時間も前からウチのギルドが経営する酒場、イーストエンドで待っていた。
「 おーい、兄貴の番だぜ?」
「 ん・・・コール」
「 上の空だぜこりゃ・・・じゃオープン、すまんな兄貴。全部頂きだ」
「 ぉーーーぅ」
「 毎日新入り来てくんねぇかなぁ、大金持ちになれるぜ全く」
さっきから暇つぶしに仲間とポーカーをやってるんだが、全然気持ちが入らんせいでボロ負けしとる。
新参者かぁ。
俺もそんな時代あったなぁ。
今じゃギルド内でも指折りの廃プレイヤーになってしまったが・・・
煙草を咥えながらいつの間にか配られていたカードを眺める。
ちなみにゲーム内の煙草はごく僅かのバフが与えられるアイテムであり、依存性は全くもって無いんだがキャラを演じる上では大事な小道具なので俺は常用している。
オンラインゲームにおいてキャラクターを演じるというのはとても大事だ。
群体の中で個を確立する為には、自分に“役割”を持たせることが不可欠である。それは、仮想現実の世界でも変わらない。
という小難しい言い訳を並べて中二病全開のマイキャラ、ふぇんりる:@を作り上げたのだ。
今更後には引けん。
「 じゃオープン」
あっ・・・また負けた。
そんなこんなで時間を潰していると、酒場の入り口から黒一色の大男が入ってきた。
グスタフ改:@だ。
「 フェンの兄貴、お待たせしました」
「 おう、ご苦労。新入りは?」
「 表に待たせています」
一瞬で仕事モードに気持ちを切り替える。
こういうのは最初のインパクトが大事だ。
黒のジャケットと黒のコートを装備し、髪をかき上げる。最後に黒のハットを被り眉間を少し寄せれば完成。
「 うし、呼んでこい」
「 完璧です、兄貴。おーーーい、入って来い!」
ニヤリと笑ったグスタフは入り口に向かって声を掛けた。
入り口に小さな影が差し、恐る恐るといった感じで扉が開く。
コツコツ。
静まり返った店内に間隔の短い靴音が響く。
ギルド仲間やガラの悪い連中も皆一様にそちらに目を向ける。
「 どっ・・どもっ!ペペルと言いますっ!宜しくお願いしますっ!」
どもりながらも勢い良く挨拶したのはどう見ても10歳くらいの小柄な少年だった。
子供じゃねーか!!?