06 神のいる世界
進みが悪くてすみません。頑張ります!
【神のいる世界】
この世界の遙か高次元にいると言われている神。
魔界の王、魔王は神によって選ばれる。
魔王は魔界にとっていなくてはならない存在。魔王がその座にいないだけで、魔界は破滅へと進んでいく。
なぜなら魔王が玉座についていることにより、魔界に魔力が満ちるからだ。
魔族の中でも魔力の量は個人差がある。アーディの様に自分の中にある魔力炉が大きければ外からの供給がなくても魔力を使えるが、魔力炉の小さい者は外からの供給がなければ魔法を使えない。
魔族にとって魔法が使えないのは死活問題だ。
――故に魔王は常に玉座にいる、べきであるが。
魔王であっても魔族の一員。人間より寿命の平均は長いとはいえそれは永久ではない。
必ず代替わりがあるのだ。
魔王の象徴である漆黒の髪と瞳。それは神から王として選ばれた証。神からのもたらされる魔力を中継して、魔界に魔力を満たす者。それが魔王だ。
しかし年を経てその力が失われていくのと同時に、漆黒だった髪は白銀へと変わっていく。それは魔王としての役目を終える印。それと同時に次代の魔王が世界のどこかに登場するのだ。
多くの者は神により選ばれた時から、その容姿が徐々に変化していく。黒以外の髪色が漆黒へと、瞳も同じように黒へと変化していく。
魔王に選ばれる基準は特になく、貴族から選ばれることもあれば、市井の子供が選ばれることもある。
そうして代替わりを繰り返して魔界は保たれてきたというのに。
先代の魔王が崩御して一ヶ月は経とうというのに、新たな魔王が見つからなかった。
黒目黒髪は魔王の証であることは、魔界に住む者にとっては誰もが知っていることである。――そのため、探さずとも自ら、または周囲の者により王都にある城に新魔王は姿を現すのが常だ。
魔界に魔力が途切れぬように。
魔王の力が弱まり、新たな魔王が選ばれれば直ぐにでも行われる代替わり。
それが今回、魔王の力が弱まっても、魔王が崩御しても、さらに一月が経とうとしても、新たな魔王が登城しなかった。
――異常事態だった。
「違う世界におられたというのは驚きですが、ようやくお迎えすることができた」
そうアーディは説明し終わると微笑んだ。
一方、美夜は再度パニックだ。
ちょっと待って。極普通――より下かもしれない、何の特技もない私が、そんな重要な責務を背負った魔王?
「ないないないない」
美夜は頭をぶんぶん振った。
――魔女と言われた。怖かった。火あぶりにされかけた。死の恐怖を味わった。
今度は魔王です、といわれても困る。黒目黒髪だなんて、美夜の世界にはごまんといる。自分が特別だなんて微塵も思えない。
「助けて頂いたことは感謝してます。――でも私は魔王なんかじゃありませんから!」
美夜はじりっと後ずさった。
生真面目だが、責任感や重圧に弱い自分を知っている。
「どう考えても私には無理ですっ」
とにかく元の世界に戻ろう。そうすれば自分より魔王にふさわしい人が現れる。そう単純に考えた美夜は
「あ、ミヤ様」
くるりと後ろを向くと、脱兎のごとくその場を走り出した。
その先が深い森の中だなんてそんなことは頭の片隅にもなかったのは、美夜の痛恨のミスであった。