1-5-2 微睡みの中
予約忘れていました。申し訳ありませんm(_ _)m
(不自然な空白が日記に残されている)
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目が覚めた。体が動かない。どうやら自分は仰向けになって倒れているようだ。視界は一面の白。不思議と目に痛くない色をしている。横を見ると、微かに黒い世界が広がっていた。
どうやら自分は死んでしまったらしい。そう考えていると、どこかから声が聞こえた。
「目、覚めた?」
驚いて声の方を見ようとする。不思議と今度は体が動いた。下も一面の白で地面すら見えなかったが、そのまま立ち上がって?全身の浮遊感と共にある倦怠感を気力で押し殺し、声の主に向き合う。
金髪の幼女がいた。
金の瞳に腰まで伸びた髪の毛。背の高さは90cm手前ほどか。白に近い、少し黄色の入った肌。純白のワンピースから伸びる華奢な腕は今にも折れそうなほど儚く、そこにいることが不思議に感じられた。全身も半ば透けているようで、奥が見える。
「きみは………?」
「私は君が倒れた所にいた、精霊ラナ。君に惹かれて、助けに来た」
何が何だかさっぱりで、混乱の極致にいる気がする。何が起こっているかもさっぱりで、だが目の前の子供?の機嫌を損ねると不味い気がするので取り敢えず返事をする。
「俺、そんな惹かれるようなこと、何もしてないぞ?」
声に出すと少し思考が纏まってきた。そしてさっきの自分の発言を思い出す。自分の髪の毛は目立つがあとは平凡、旅をすると決めているので生活も安定していない。好奇心は大いにあるが、そのせいで今も死んで?死にかけて?いるのだ。むしろマイナスの面が強くて誰も見向きもしないだろう。うん。話したことは間違っていない。
「ううん、その好奇心と、私のいる所を見ていたその目。それに惹かれた。それで、君を助けたいけど、契約が必要。契約をすれば斬られた背中も、今も見えない目も治る。断ればこのままあちらの死後の世界に流れ着く。ここは死に最も近い場所。さあ、選択を」
そうしてさっき見えた黒い空間を指さしてすぐに選択を迫ってくる。
…確かに右側が見えない。その事が分かるぐらいには落ち着いてきたので、深呼吸を一つしてさらに落ち着く。
…返す言葉は一つだが、確認はしておかないと。まだまだ俺は死にたくないが、何か悪いことがあるのであれば、俺は一生を後悔することになる。
「なあ、契約を結ぶとどうなるんだ?」
「一生、私と生きていくことになる。あなたの寿命が尽きるまで、その最期の瞬間までずっと。それ以外は大きく変わることは無い。どこかに行くのも自由」
良かった、特に悪いことはないようだ。彼女と気が合うかは分からないが、不思議と大丈夫な気もする。
ずっと旅をし続けるがぼっちというのも辛い。ずっといてくれる仲間というのは非常にありがたい存在だった。
ただ、今自分がどうなっているか、それについても聞いておきたい。この空間についてもよく分からない。自分がどんどんと曖昧になってきている気がするのが言い表せない恐怖を呼び起こす。
「なるほど。ところで、俺は今どうなっているんだ?」
「それは、ええとまず、今あなたは体と魂が離れてる。魂は今のあなたの状態。本来なら覚醒することも無くあっちの死に行くけど私が引き留めてる。これは高位精霊たる私クラスで無いとできない。でも長くは持たない。で、体は死に掛けた状態であなたが見ていた木の横まで転がってきて、そこに横たわってる。そちらも保護してるけど、幾らかしか持たない。ただ、契約を結ばないとすぐに死ぬと思う」
「俺、かなりやばい状態になっていたんだな…ん?そう言えば今はいつなんだ?あと、どのぐらい俺は保たれるんだ?」
「ん、日は分からないけど…倒れてから7回太陽が登ってる。それで、あなたはあと現実で5日ほど、ここでは5分ぐらいもつ。でも時間内でも遅くなると一生の怪我になるかも」
かなり厳しいことになっていた。右目はさっきから全く見えていないし、確かに死に掛けているらしい……いや、本来ならもう死んでいたか。これは腹を括るしかない。
「分かった。………契約を結びたい。どうしたらいい?」
「…口付け」
「……え?」
落ち着け、俺。聞き間違いかもしれない。取り敢えず聞き返そう。うん。急過ぎて聞き間違えただけ。そうに違いない。
しかし、その期待は裏切られることになる。
「口付け」
…………聞き間違いではないようだ。しかし死ぬよりは幾分もよい。そう自分にいい聞かせて、返事をする。
「…………分かった」
そうして、戸惑いながらも彼女とキスをする。意識が再び遠のいていく。しかし、今度は体の芯が温まるような、どこか安心出来る心地だった。
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ソロの青年を斬ってからしばらくして。
「ここがアイツの家かな…もらした話が嘘かと疑ったがどうやら合っていたらしい」
「だなあ。そういやあいつ、空魔石のペンダント付けてたじゃねえかあ。まだ殆ど染まって無かったから高く売れただろうに、あれが目的の一つだったが、まあ仕方ねえなあ。流石にもぎ取れるほどヤワなチェーンでも無かったし、あそこならああ処理するのがもっとも安全だから、仕方ねえか」
そうして男達は家の戸を叩く。
しばらくして中から女性が出てくる。
「はい、どちらさまでしょうか」
人妻とはいえなかなかの上玉だ。男を殺したあとに楽しむのも悪くないと3人の意思は無言のうちに固まった。
「ああ、冒険者だ。実は…………」
そして数分後。自宅の応接間で夫婦と男達は対面していた。
「それは……本当か?」
男は酷く狼狽えた様子で返事をしてくる。
「そうだ。アンタらには酷かもしれねえが、これが現実だ。遺体が欲しいなら金を払ってくれたら後で持ってきてやるよ」
男は悩んでから返事をする。
「そうは言ってもやはり信じられん。息子は旅に出たから冒険者に登録したはずだが、ギルドカードはあるのか?それがないと流石に信じられん」
男達は計画を前倒しすることに決めた。
「分かった。ほらよ」
そして荷物から取り出したカードを見せる。リュックに入れたままにしてくれて助かった。そしてそれに注意を向けた瞬間、抜刀術:居合いで切り裂く。
「ふっ!」
ガキンッ!
「え……?」
剣で防がれた。
ありえないありえないありえない。今のは完全にスキをついたはず!最高速で抜刀、振り抜いたはずだ。馬鹿な!何故!?
「そうなると思ったよ……俺の息子は無事だ。そしてお前は、ここで真っ当な人生を終える。いや、もう終えているか」
「ちっ!プラン変更だ!」
その合図で、弓師の男は女の方を捕まえようとしたが…
ゴキリッ!
その手を女に捻り折られた。
「__アアアアアアアァァァア!」
「なっ!このアマが!」
魔術師の男は女に向かって使い慣れた土のつぶてを幾つも打ち込もうとする。しかしそのつぶては何故か少し進んだところで塵と化し、速度も失って床に降り積もった。
「お前達は喧嘩を売ってはいけない存在に手を出してしまったんだ。その様子だと俺が誰か分かっていないようだな」
家の男の方が語り出す。
「俺は元SSSランク冒険者。《闇帝》《死神》、他にも呼び方はあるが、超がつく有名人なのは自分で分かっているつもりだ」
その言葉を聞いて、魔術師の男はあまりの恐怖と自分たちの愚かさに気づいて、膝をついた。そして剣の男は吠える。
「馬鹿な!そんなことは有り得るわけが……ない…は…………ず…」
しかしその言葉も圧倒的な威圧感と存在感の前には尻すぼみとなってやがて聞こえなくなる。
「ならば、もしやその横の女は…」
「女とは失礼ですね。私も元SSSランク冒険者。《聖女》《光姫》、他にもあるけど、昔はそう呼ばれていましたよ?」
__終わった。もはや体は恐怖で全く力が入らない。男達は自分たちの敗北を全身で感じ、大人しく法に裁かれた。
判決は無期限の鉱山労働に決定した。
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「しかし、よく息子が無事だと分かったな。あいつらの気配がした時に教えてくれた時だよ」
男が妻に話しかける。
「ええ、だってあの空魔石、私が作ったんですもの。その位わかりますよ?」
「……マジか。不思議な感じがしてると思ったら…まあそれじゃ、あいつがまたこっちに寄るまで待つか。あと、山にいるもう一人の息子にも何があったかは言っておかないと」
そうして日常へと戻っていった。
今回はステータスはありません。
父親の方は近接戦闘と闇魔法のスペシャリスト、母親の方は光魔法というか魔法全般のスペシャリストです。二人とも強いです。総合レベルは900を超えています。
あと、普通の人は魔石なんて作れません。彼らが異常なだけです。