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驟花の骸  作者: Violet
8/8

雌伏

変な夢を見た気がする。まだ胸がざわざわと落ち着かない。

……今日が、日常最後の日だからか。

どうしてこんな事になったのか、未だにはっきりとした理由は見いだせない。

抄は歯を磨く手を止め、鏡を振り返って唖然とした。

自分の口角が上がっていたから。

プールに浮いた遺体を見てから、自分は非日常を楽しんでいたのだ。沢山の感情が入り混じって顔が歪む。

いたたまれなくなって、勢いよく歯磨き粉を吐いた。


私はおかしいんだろうか。あんなにも怖いのに、歩調が上がっていく。

どうしてこんな事になったのか、未だにはっきりとした理由は見いだせない。

火障は歩く足を止め、来た道を振り返って唖然とした。

……

二人が図書館で合流したとき、外の景色には星がうっすらと浮き出て来ていた。

白い月の感傷的な空の下、お互いのいたたまれない表情を見つめあって苦笑した。最初に切り出したのは火障だった。

「場所は、」

「事務室と、入口付近のカウンターでいい?」

……なんで笑ってるんだ。

「……分かった。」

何となく、そう感じ、疑問を肯定に変えて口にした。

日は落ちて、視界の端にちりちりと残像を残すのみとなっていた。


抄はカウンター、火障は事務室、当番は変わりばんことLINEでやり取りをするように取り決めてから1時間弱が経とうとする頃だった。

きぃー……

施錠された筈のドアの開く音がした。

どうして。火障さんが鍵は持ってる筈。

しかも、施錠は確認したと言ってたし。

足音は静かに移動する。

頭がピリピリとして手から体温が吸い取られていく。

ーお願いだから早くカウンターから離れて……!

その時、屈んでへばりついた抄の真上で足音が止まった。

ーバレた……?

コツコツとカウンターを叩く音。そして、ペンを取り出す音。

そして悠々とした足取りで音が離れていく。抄はそっと端末を取り出して暗く設定したLINEの画面に焦りを並べる。

《きた、そっちいく、ほんだな、ぺん》

送信。

ピコンッ。

……うそ。火障さん通知音OFFにしてなかったの!?

さぁっと血の気が引くとともに夜の冷たい風が頬を撫でる。

足音は止まり、静けさだけが空間を支配する。誰も動くことの無い氷の空間。

ー最初に動いたのは足音だった。

来た時よりも小さなおと。かさ、かさり。きぃー……とドアの開く音がして、

ごとり。鈍く響く音を残して去っていった。裁断を下す様な、心臓を揺さぶる音を。

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