6/8
主根
ガンガンと頭の中に不協和音が木霊した。わざわざ遺言するなら最後の一文は書こうとは思わないんじゃないか。そもそも誰に伝えようとしたのか。
《私はゲ……にま……ま…し…。》
血液で見えないところ。検討は、つく。
"私はゲームにまけました。"
『ゲーム』って何なんだ?
考えている間も、不穏な音は蔦のように巡る推論にまとわりついて、あの光景をフラッシュバックさせる。
「……泊まる?」
火障が徐に発した言葉に、抄は一気に意識を引き戻された。
「……見張る?」
「そう、メモを書いた人がシリアルキラーなら、その人を特定すれば何か分かるかもしれないから…」
発案したものの、火障は体を強ばらせている。本当に実行したいのかどうか、聞くまでもなかった。
「止めよう、火障さん」
「ど、どうして?」
「怖い、よね」
「けど、けど!私は二人だから出来ると思ってる!」
「でも…」
「橘さん、私はこれ以上身近な人が消えていくのが怖い。もし、万が一、私か橘さんも…って思うともっと怖い」
抄は、ふっと息を吐き、火障を見詰めた。迷いは、無いようだった。