前半
合宿に行くことになった慎二は
箱根へと向かう。
だが、そこには信じられない光景だった。
人質とされた先生と1年生全員を救う事ができるのか・・。
慎二は雑木林に堀山と一緒に入っていった。
慎二と堀山は雑木林の北西の辺り担当だった。
北西って言っても範囲は広くて探すのか困難だった。
慎二は迷子になると困るので携帯を持っている堀山とつねに行動していた。
慎二は携帯って便利だなと思った。慎二は携帯の事には余り興味無かったが、
こうして見てみると携帯を持っている堀山がカッコよく見えた。
雑木林って言っても凸凹が結構あって、普通に歩くのも困難だった。
カブトムシは全然いない。いるのは小さい見たことも無い昆虫だった。
「本当にあるのかよ」
口を開いたのは堀山だった。その事には慎二も思っていたことだった。
「あぁ、分からないけど探すしかないだろ、今何時?」
「えっと・・・、2時半だな。」
「そうか、まだまだ時間はある、根気よく探して行こう。」
堀山は声を出す代わりに首を縦に振った。
慎二は目を光らせて辺りを見渡した。
「なぁ、慎二、聞きたいことがあるんだけど・・・。」
堀山は木を探しながらつぶやいていた。
何?と、慎二も顔を木に向けて答えた。
「何で、犯人はお前の名前を知っていたんだ、誰か知っているのか?」
慎二は少し考えていた。慎二自信もその事に悩んでいた。
その時、頭に父親の姿が一瞬浮かび上がった。
「いや、顔を隠しているし、声も聞いたことが無い。ただ・・・。」
「ただって何?」堀山はやっとこちらの顔に目を向けた。
「いや、なんでも無い、とにかく探そう。」
堀山はそれ以上口を開かなかった。
無言の様態が結構続いた。
さらに歩いて1時間ほど経っただろうか、堀山の携帯から音がした。
メールだったらしい。
「何だって?」
慎二はただ、堀山の返事を待つだけだった。
「井口がカブトムシ一匹捕獲だって、何か背中に文字が書いてあるって、」
慎二と堀山はその写真を見てみた。
「・・・6?」カブトムシの背中には6が書いてあった。
堀山は携帯を閉じた。
「なぁ、慎二、何で文字が書いてあったと思う?」
慎二には分からなかった。だが、一つ言えることは、犯人は何か暗号か手がかり
をカブトムシの背中に書いたのだと思う。でも、今はそんな事より一刻も早くカブトムシを探す事に集中した。慎二はカブトムシが本当にいることに確信した。
だが、こんな広い雑木林で30匹のカブトムシを探すのは簡単なものではなかった。
だが、ひたすら探すしかなかった。
そして謎の暗号『6』は何のためにあるかは分からない。
堀山がいきなり肩をたたいてきた。
慎二は堀山に目を向けると、堀山は木の枝に目を置いていた。
慎二はその目線に目を向けるとそこにはカブトムシがいた。
カブトムシのいる場所は結構高かった。
堀山はゆっくり慎重に虫網をカブトムシに覆った。
「捕まえた!」堀山は嬉しくて声に自然と力が入った。
慎二は持っていた虫かごにすぐ入れた。
背中には文字が入っていた。
『血』が書いてあった。慎二は予想外だった。
『6』と『血』にはどんな関係があるのか検討も付かない状態だった。
さっそく堀山は捕まえた事をメールしていた。
堀山はものすごくテンションが高かった。
いきなり鼻歌を歌いだしたのだ。
慎二は負けずとカブトムシ探しに集中した。
だが、見つかるのは変な昆虫だけだった。
さすがに慎二はイライラしてきた。堀山がカブトムシを見つけて5,6分ぐらいだろうか、
カブトムシを探していると、向うに人がいた。
「松浦じゃないか、こんな所で何しているんだ。」
松浦は答えようとしなかった。松浦はたしか、もう少し奥ののほうを探せって言われているはずだが・・・。
「めんどうくさくてつまらないし、俺ここで休むわ、」
松浦はいきなり疲れたとか言っているが、ヤル気が無い顔だった。
慎二は絶対こういう奴がいると分かっていたが、実際に見ると頭にくる。
人の命が懸かっているのに・・・・。
「行こう、松浦はほっといて、」
慎二はそう言って堀山の腕を引っ張り松浦を無視して引き返した。
「バッカだな、意味無いと思うが・・・。」
松浦がいきなり小言でつぶやいていた。
慎二はさすがに怒って松浦に近寄り、胸を押した。
「お前、人の命がかかっているんだよ、それなのにどうして・・・。」
慎二の言葉は怒りで震えていた。
「俺たちは関係ないし、それに1年生なんてカスだし。役に立たないし・・・。」
松浦はもうどうでもいい、厭きれた表情だった。
厭きれた慎二は松浦をほっといてどっか行ってしまった。
「たく、ムカつくやつだよ、ムカツク」
慎二は堀山に愚痴をずっと言っていた。
さすがに愚痴を聞いている堀山は不愉快になった。堀山は慎二を説得しようと思ったが、
上手くいかずにただ、堀山は、慎二がぶつぶつ言っている愚痴を何回も聞いているだけだった。
そんな時だった。ついに慎二が怒りを木にぶつけた。木を蹴ったら、何か落ちてきた。
「あっ!」慎二は思わず声を上げてしまった。
カブトムシが落ちてきたのだ。慎二はすぐに虫かごに入れて
背中の文字を見た。そこには何にも書いていなかった。
「これって、違う奴かな?」
堀山は慎二に尋ねてきた。
「いや、それはない。今の時期にカブトムシなんかいないし・・・。
とりあえず、皆に伝えよう。文字が無いやつもあるってね。」
堀山が首を縦に振ってポケットから携帯を出してメールした。
慎二は気がついたときにはさっきまでの松浦に対する気持ちが消えていったのだ。
慎二はカブトムシが見つからなくて松浦に八つ当たりしただけだったのだと、
慎二は反省していた。慎二は後で謝ろうと決心した。
そんな時、堀山の携帯から音が漏れ出した。
堀山が急いで携帯を確認していた。
「見つかったって、文字は・・『浅』だ。」
慎二はメールの中の写真を覗いた。今度は漢字が入っていた。
送信先は大沼だった。
「わけが分からないな、」
慎二と堀山は頭を抱えて暗号の意味を考えた。
しかし、考えても分からなかった。
そんな時、犯人は先生に問いかけた。「あなたの生徒がここまでよく見つけているとは、
しかし、あなたは何故、私たちから狙われていると思いますか?」
犯人は銃を構えて先生に問いかけた。
先生はガムテープで口をふさがれているのでうまく聞き取れなかった。
「もしかして、私を忘れているとは言わせませんよ、私はあなたの・・・・。」
犯人は先生に銃を向けて引き金を引いた。
「お前は絶対殺す。彼のためにも。しかし、彼はまだ気がついていない。
お前を殺すのは奴に全てを明かしてからだ。そう、湯浅慎二君に・・・。」
そして・・・銃声が鳴り響いた。「なんてね、先生、今は静かに彼らを見守りましょう。」
現在のカブトムシは4匹、残り26匹。