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第八活 裂刹(ざせつ)

戦いはまだ終わらない

主人公のトラウマが――そして……

道中、テラスや強化人間と何度かの戦闘を経験する。

だがサイコスーツの力を取り戻した協力者たちの敵ではなく、容易に倒すことができた。それはみんなが成長している事が手に取るようにわかる内容だ。

俺の方はというと、LCを使いみんなの体力温存に努める。


だが思う様に目的地までは進めず、職安の近くまで来るのに三週間ほどかかってしまった。

途中、原形を保っている建物などで休みながらも、みんなの顔色からは疲労困憊しているのが分かる。

「あー疲れた!」

「もう少しです。頑張って下さい北条さん」

「いや~でも主任さん、北条ちゃんの言う通り、さっすがに疲れるわ」

「確かにここまでの道中、強化人間がこうも沢山いるとは。しかも一人ひとりがクラスαかβですからね」


――すると突然、

「止まれ!」

前方から人の声が聞こえた。

「それ以上近づくな!! 近づくと撃つ!」

あまりの尖り声で立ち止まる。

「貴様ら見たところ地球人の様だがどうなんだ!」

「どうなんだって? ――何が?」

質問の意味が分からず俺が聞き返す。

「強化人間か、そうじゃないかだ!」

「オイオイ、物騒だね~。強化人間は言葉が喋れないんじゃないの?」

間藤が前に出る。


“――バンッ ”


弾けた音にみんなが身構える。

銃弾は間藤の足元の地に深く食い込んだ。

「洒落にならね~事やってくれるじゃないの」

彼の怒りが伝わってくる。

それを感じてか、御堂条が両手を上げながら前に出た。

「待ってください。私たちは強化人間では決してありません――信じて下さい」


一瞬だが沈黙の時間が過ぎる。


するとスーパーらしき建物から、ライフルやマシンガンを持った人間が数人出てきた。

その中には女性の姿も。

「――全員後ろを向け! おい、あれを」

何かを取り出し、それを俺たちに当てる。

俺らは言われるがまま後ろを向き、両手を後頭部に当てた。


「……問題ありません」


「……そうか。……すまない――前を向いてくれ」

俺たちは再び回れ右をする。

「どうやら本当にただの人間のようだ。まさかこんな場所を普通に歩いているとは思わなかった」

そう言ったのは迷彩服を着た大男だった。

(軍人か?)

「紹介が遅れた。我々は宇宙人に抵抗している――いわば【レジスタンス】、抵抗軍だ」

(レジスタンスってゲームや映画でしか聞かないが、やはりこういった状況になると本当に現れるんだな)

「レジスタンスですか。私たちも同様、奴ら宇宙人を敵視しています」

「そうか。だが君等は何故全員スーツを着ているのだ? 同じ会社の仲間か?」

「まぁ――そんなところです」

「なるほど。で、キミが上司かね?」

「あ、いえ、上司は彼です」

そう言って御堂条は、俺の方に手のひらを向ける。

「ん? そうなのか? それは失敬。私はレジスタンス神奈川支部のリーダーをやっている【時任ときとう 三郎さぶろう】だ」

握手を求められ、それに応じる。

「武山孝です。一応自分もとある会社で神奈川支部の支部長やってます」

そう挨拶をしたものの、俺はある事が気になった。

(ん? これまたどこかで聞いた事ある名前だな。あ、CMの)

「――あ、黄色と黒は勇気の印だ!」

「だから北条、てめぇーは黙っていろ!! つ~かその時代にお前は生まれていたか!?」

「あ!? 前にオヤジから聞いた事があるんだよ!」


「……本当に彼が上司なのか?」

「はい……一応――はははっ」

御堂条が苦笑いを浮かべながら答えた。

「ここら辺は危険だ。我々レジスタンスのアジトに案内しよう」

そう言いながら、時任が先頭に立ち移動を始める。

それに対して俺は付いて行くかを考えた。

なぜなら当初の目的は、突火区の職安だからだ。

全体会議まで、もう一週間しか残っていない。

遠回りになる場合は断らなければと思い、彼に尋ねる。

「時任さん、アジトは近いんですか?」

「ん? ああ、ここから歩いて二十分ほどの突火区にある。……なんだ? 付いて来ないのかい?」

「あ――いえ、自分たちも突火区に用事があるので好都合です」

「そうだったのか。 目的地が一緒なら、我々と行動した方が安全だぞ。見た所、キミたちも武装はしているみたいだが、それでは心許無いだろう」

レジスタンスは俺たちの脳力を知らない。

見た感じスーツ姿に脇差やトンファーで、美琴の重武装を除けば確かに頼りなく見えるだろう。

特に俺は丸腰だった。

備蓄庫で武器を眺めていただけで結局何も持ってこなかった。

ここに来ても自分のダメ人間さが露呈してしまう。

「そうですね。ではお言葉に甘えさせて頂きます」

そう言い、彼らの後を付いて行くことにした。


「ところで時任さんは、おいくつなんですか?」

「ん? 俺か? 俺はこう見えて三十八だ。若く見えるだろう――ワハハハハッ」

(いや、その逆だよ。てっきり四十代後半かと思っていたわ)

時任の見た目は、体格が映画ランボーの時のスタローンばりでガッシリとしており、身長は俺と比べたら、190はあるかと思うぐらい大きい。

頭は坊主で口髭と、初代アメリカ大統領リンカーンばりの顎鬚を生やしており、お世辞にも若くは見えない。

「キミはいくつなんだい?」

逆に聞き返される。

「ちょうど三十です」

「三十!? てっきり俺と同じ歳ぐらいかと思ったわ」


今、LCを飲もうか悩んだ。


「あはははは。そんなに老けて見えますかね」

「――ああ」

(即答しやがって)

俺の手は胸ポケットの、タブレットケースを掴んでいた。

それを見ていたカルラが無言で首を横に振りながら制止する。

「アホなことしないで」

「くっ~」

悔しいが手を引っ込めた。


談合モードを切っていなかった為、少し後ろを歩いている御堂条と、レジスタンスの女性との会話が聞こえてくる。

「私は御堂条影時と申します。あなたのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「オレか? オレは【仙道せんどう ひかる】だ」


(オレ? 女性なのに一人称をオレというのか。変わっているな)

彼女の外見は、身長が高く、170はあるかと思われる。

体躯は痩せているように見えるが、服の上からでも分かるぐらい筋肉の引き締まりを感じる。

髪型はベリーショートで色は金髪、それがよりボーイッシュさを際立たせていた。


「光さんですか。いいお名前ですね」

「そうか? オレ自身はあまり気に入っていない」

「私の名前は漢字で書くと影が入ります。光と影、いいじゃないですか。仲良くしましょう」

「ふ~ん。オレはあんまり、じゃれ合うのは好きじゃないんだ」

「そう――ですか……」


背中越しで振り返ったわけではないが、御堂条の声のトーンで落胆しているのが分かった。

盗み聞きはよくないと、俺は談合モードをオフにする。


――それから二十分。

敵に遭遇する事もなく、無事にアジトに着いた。

「さぁ、我らがアジトにようこそ!」

時任が蛮声をとどろかせた。

そこには原形を留めていた、巨大なホームセンターがあった。

「へぇ~これまた凄いね~」

間藤が驚嘆の声を発する。

「さぁ、来てくれ!」

そう言い、入り口の近くまで行く。

すると門番らしき武装をした軍人が四人いた。

どうやら俺らを注視している。

「彼らは大丈夫だ。強化人間ではない。だが、とりあえずいつものやつを」

時任がそう言うと、門番は例の強化人間を識別する器具を持ち、近づいてくる。

勿論反応はしない。

だが彼らは、レジスタンスのリーダーである時任にも器具を当て始める。

「え? 時任さんはいいんじゃ――」

「――いやいや、これはルールなのだよ。例外はない」

「そう……なんですか」

いささか驚いたが、しっかりしているなと率直に思った。

「大丈夫です。開門!!」

門番の声に、鉄の壁がゆっくりと上に引き上げられる。

ホームセンターやショッピングモールならば普通は自動ドアだが、世界が変わってしまった今、壁や窓は鉄の板で頑丈に補強されているようだ。

「中に入ってくれたまえ」


中に入ると想像以上に広い空間が、目に飛び込んできた。

しかもセンター内には老若男女問わず、生き永らえていた人間がいた。

その数は数百人いるかと思うほどだ。

「すごい……」

あまりの光景に、自分でも気づかないぐらい小さい声で呟く。

その集団の中から、小さな男の子がこちらに向かって走ってきた。

「おにいちゃんたち、だれ? なにしにきたの?」

この歳でお兄ちゃんと呼ばれた事と、この子の可愛さに俺は思わず恵比須顔になる。

「俺はキミのヒーローになる為に来たんだ」

「ヒーロー? ホントに!?」

「ああ、ホントさ。キミの名前は?」

「ぼくアキラ」

「アキラくんか。よろしくね」

俺は彼の頭を優しく撫でた。

「アキラ! 何しているの!? 勝手にどっか行っちゃダメでしょう」

母親らしき女性が慌てて駆け寄る。

「どうもすいません」

「ああ、いえ。かわいいお子さんですね」

「――そんな。やんちゃで手を焼いていますよ」

「男の子はそんなもんですよ」

母親は軽く会釈をし、男の子の手を取り去っていく。

去り際にその子が、

「ヒーローまたね! バイバイ」

と元気よく手を振ってきた。

それに応え俺も大きく手を振る。


――その後、俺たちは休憩所に案内された。時任は他の部隊と合流し、状況報告をすると言って休憩所をあとにした。

すると一人の女性がコーヒーを淹れて持ってきてくれ、芳しい匂いが部屋中に広がり、心が安らいでいく。


「ところで支部長さん、先程見ていましたが、子供の扱いがお上手なようですね。ちょっと意外でした」

「ああ、甥っ子がいて面倒を見たりしていたからな」

「甥っ子と言うと兄弟がおられるのですか?」

「うん……兄ちゃんがいる」

俺のちょっとした間が気になったのか、みんなが聞き入るように姿勢を前のめりにする。その中で、御堂条が聞いてきた。

「何か兄弟の間で問題でもありげですね」

「……まぁ。――俺と兄ちゃんは二十歳まで一緒に住んでいて結婚を機に家を出てったんだ。……うちの兄弟は特殊でさ。兄ちゃんは凄く恐い人で家庭内暴力とか日常茶飯事だった。特に俺には激しかったよ。毎日ストレス発散の為に、サンドバッグ状態で殴られ続けた。兄ちゃんが怒ると俺の口調は敬語になるんだよ。おかしいだろ? 兄弟だぜ」

「そ……それは悲惨ですね……」

「だから兄弟喧嘩なんてした事ない。普通なら兄弟間でも、オマエとか喧嘩になったらテメェとか口調があるだろ。うちにはそれが一切ない。当時は友達とか他の兄弟を見ると、羨ましかったよ。いっそ一人っ子だったらよかったなと思い、兄を殺そうとした事もあった。勿論、思い留まったが」

「あんちゃんにそんな過去が……」

剛田のオヤジも同情の眼差しで見てくる。

「でも尊敬できる部分もあるんだぜ。喧嘩が強いから、俺が外で喧嘩して顔を腫らして帰った時は「どこのどいつがやったんだ!?」って言って敵討ちしてくれようとしたし、小学生の頃は、蜂に刺された事があって、その場ですぐに毒を抜こうと、刺された場所に口を付けて吸い出してくれたし」

「……」

みんなが一様に押し黙って、暗い雰囲気になってしまった。

だが俺は息急き切ったように喋りだす。

「こうなった原因はなんとなく分かっているんだ」

「それは……一体?」

御堂条の問いに、

「母親だよ」

「! お母さんですか?」

「ああ、母ちゃんは俺が生まれてから、凄く可愛がってくれたんだ。それこそ兄ちゃんをそっちのけでね。だから兄ちゃんからしてみたら俺は、母親を奪った憎き相手だったんだろう。その証拠に、結婚して子供が出来た今も、母ちゃんと口論になると「孝ばかり可愛がりやがって!!」と怒鳴るらしい」

「なるほど。母親の愛情を受けなかった。そしてその愛情を全て受けた支部長さんに嫉妬していたのでしょう。それが段々エスカレートしていき暴力に至ったといったところですか」

「……」

御堂条の言葉に無言で頷く。

「ちなみに今、お兄さんはどこに?」

「家はここからすぐ近くだよ」

「そうですか……。行こうとは思いませんか?」

「……行ったところで生きているかどうか……。俺的にはどっちでも構わないし」

「支部長さんの気持ちは分かりますが、もしかしたら甥っ子さんたちが助けを待っているかもしれないですよ」


その言葉で俺は少し考え、

「……そうだな。みんな悪いけど寄り道してもいいかな?」

「上司の命令には逆らえないでしょ」

「しかも主任と支部長の意見に反論なんて出来ないですよ」

間藤に続いて海道も了解してくれた。

「アンタだけ特別扱いっぽくて嫌だけど、その兄貴が気になるからアタシも行くよ」

「ワタシたちは上司に付いて行くだけですから」

「わたしはなんでもいいよ~」

北条にジュディス、美琴も賛同してくれた。

「カルラ……」

何も言わない彼女に不安が募る。

――すると突然スタスタ歩き出し、

「何しているの? 行くんでしょう」

(暗黙の了解ですか)

俺の口角は上がっていた。

「あれ? あんちゃん、ワシは?」

「それじゃーみんな行こう!」

「だから、あんちゃんワシはまだ一言も」


“バーーーーンッ!! ”


――一瞬の出来事だった。

鋼鉄で固められていたはずの入り口が、根こそぎ吹き飛んでいる。

その衝撃で入り口の近くにいた人達も、巻き添えを食い倒れていた。

突然の出来事にセンター内は混乱し、阿鼻叫喚が聞こえる。

その中で、見覚えのある女性が倒れているのが視界に入った。

「――っ! 仙道さん!」

咄嗟に御堂条が彼女を見つけ駆け寄る。

その傍らには、入り口の警護に当たっていた四人が無残な姿に変わり果てていた。

「仙道さん! 大丈夫ですか!?」

「……うる……さいね……アンタは」

みんなも駆け寄ったが、あまりの悲惨さに女性陣は目を背ける。

「うそだろ」

間藤の言葉と同時に、海道は物陰へと走り嘔吐する。

それもそのはず、彼女の体は辛うじて上半身と下半身が繋がっている状態だった。

「大丈夫です! 必ず助かります! ジュディスさん、早く彼女を!!」

御堂条は狼狽していた。

だがジュディスは顔を横に振る。

「無理です……」

「は!? 何が無理なんだ! 早くしろ!!」

彼は声を荒げ叫ぶ。

そこに俺は、

「もうやめろ。彼女はすでに死んでいる。そっとしてあげよう」

「何を言っているんですか? まだ彼女は……くっ!」


彼女の上半身をそっと下ろしながら、御堂条は唇を血が滴るほど噛みしめていた。

 「ちくしょう!! 何故なんだ!! 何故こんな事に……」

そう言いながら彼は入り口を睨む。

すると砂埃と共に人のシルエットが浮かんだ。

「!!」

その影が段々とハッキリ見えだした途端、みんなが絶句する。

「時任さん!」

俺が叫ぶ。

そこにはレジスタンスのリーダーである時任がいた。

『ふふふ。愚か者共め!』

彼の方から発せられた言葉は、明らかにこの状態を作り出した張本人だ。

「……まさか……時任さん――あなたが」

御堂条が怒りに任せ、勢いよく駆け出す。

だが数メートルの所で突然急ブレーキを掛けた。

「なっ!!」

何が起きたのか、みんなが彼のもとに駆け寄る。

「これは……どうなってんだよ」

時任の目前にきて俺たちは気付いた。

彼の頭を背後から片手で鷲掴みにしている何者かがこの状況を作った張本人である事に。

「何者だ!?」

俺が叫ぶと、背後のヤツとは別の人影が上空から舞い降りてくる。

『実に面白いですね~、地球人共は』

「また貴様らか、ソフォス!」

『おかしいですね~。ワタシはあなた方とは初見のはずですが』

「そうだよな。じゃー教えてやる!! 俺たちはお前の同胞を二人倒してここにいる!」

『……そうですか。……あなた方でしたか。ふふふふふっ』

「――気でも触れたか?」

『いえ。同胞をやったなど、どうでもいい事です。あなた達の様に仲間だの何だのと綺麗事を言う種族ではないのでね。それが可笑しくて。……ですが気分は良くないですね。地球人如きにやられっ放しでは。……だが直接ワタシが手を下すまでもない――やれ!!』

そう言うと、時任を鷲掴みにしていた何者かが動き出した。

そいつは時任の背後に重なっており、強化人間か宇宙人なのかは判別できない。


“――ブシュッ ”

握力の強い者がリンゴを片手で握りつぶす様に、その者は時任の頭を瞬時に粉砕した。

「っ……!!」

声にならない怒りが込み上げてくる。

「やりやがったな――この野郎!!」

その怒りは俺の手をタブレットケースに触れさせるのに余りある行為だった。

「支部長さん、ここは私が」

ケースまで伸ばした手を御堂条に止められた。

「なぜ止めるっ!!」

俺は怒りの眼を御堂条に向けた。

だがその怒りの炎も彼の顔を見て冷めていく。

なぜなら彼の黒目は大きく見開かれ、俺以上の怒りに満ちていたからだ。

そしてそれは殺気となって、ビリビリと伝わってくる。

「支部長さん。私の脳力を見せていませんでしたね――私は体力強化系です」

言葉の終わりと同時に、彼はクラウチングスタートのフォームをした。

“タンッ ”

一瞬、御堂条が消えたように錯覚する。

気付いた時には、敵であろう人影の眼前に迫っていた。

「くらえ!!」

彼の渾身の拳が炸裂する。


“ドゴーーーーンッ ”


物凄い轟音と共に突風が巻き起こり、埃を全て晴らした。

みんなは砂塵を防ぐため、腕などで顔をガードする。

そして治まったのを見計らい、戦況を確認するため再度、凝視した。

「――ッ!!」

言葉にならなかった。

目の前に起きている事を疑ってしまう。


「相手は強化人間だったのか。だが……何がどうなったら……ああなるんだよ……」

間藤が地面に膝をつき、愕然としながら言った。

御堂条の一撃は確実に相手にヒットしたはずだ。

だが彼の右腕は肩から先が無くなっている。

「御堂条ーっ!!」

そう叫んだ俺は、すぐさま駆け付けようとしたが、相手を見た瞬間足が振るえて動かなくなった――というより本能がそうさせたのだろう。

「早く助けないと!」

ジュディスが俺を追い越していく。

「ま……待て!!」

俺は必死に声を絞り出して制止させる。

「ですが、支部長さん……」

「今行ったら……お前もやられるぞ」

「え!?」

ジュディスが何故? と言った感じで見てきた。

だが俺は彼女の正視に堪えられずに目を逸らす。

「アンタ、御堂条を見殺しにするのかよ! 相手は強化人間だろ。いくら強くてもみんなで掛かれば勝てない敵じゃないはずだ!」

北条の言葉に唇を噛みしめる。

「孝……」

カルラにも顔を向けられない。

「ごめん……みんな、あの強化人間には……勝てない」

俺の口からは謝罪の言葉と、戦意を無くした愚かな男の言葉だった。

「た……闘ってもいないのに、ど、どうしてそんな事が言えるんですか!!」

海道の紅顔が、俺の一言で渋面じゅうめんへと変わる。

「あんちゃん、どうしたってんだ?」

心配そうに剛田のオヤジが顔を覗いてくる。


「……あ……あれは……あの強化人間は……俺の兄ちゃんなんだ」

その言葉に全員が絶句する。

「うそ……」

美琴が口を手で覆いながら呟いた。

「でも誰かがやらなければここで全滅する」

カルラが一歩前に出て脇差を抜く。


次章ではついに兄弟喧嘩勃発!?

それとも敗北宣言!?

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