表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/98

「? 問題でもあるのか? 母さん」


「あると言えばあります。だって『外』の人達が協力してくれるんでしょう? 裏の意図がないと思いますか?」


「それは……」


 否定できない程度には、彼らの下心が予測できる。

 実際、番組の方では、確証を抱かせるような報道がなされていた。


『機材を動かすために必要な神霊石は、魔術都市で確保することになりました。神霊石は破壊が義務とされていますが、都市上層部には心当たりがあるようで、準備を急いでいます』


 魔科学の動力、心当たり。

 頭の中に浮かぶのは二人と一匹――いや、三機のことだ。

 キャスターが言ったように、神霊石は発見され次第破壊される。魔術都市内部には基本、蓄えがない。

 統括局から情報が与えられているなら、紫音達は候補に上がるだろう。もともと機甲都市の産物なのだから、同族意識だって湧かない筈だ。


「……どういうつもりなんだろうな、連中は」


「恐らくこれを期に、魔科学の本格的な導入を狙っているのでしょう。魔力酔いの対策にも、魔術都市は良い実験場でしょうから」


「怖いもんだ」


 俺の視線は、またテレビへと戻る。

 しばらくはこの事件を取り扱うようで、統括局の意図を感じてしまう。『外』の出先機関として、十分に役割を果たすというわけだ。

 湊らしき人物の情報が、番組に流れる。


『神霊石化の事態は深刻で、すでに身体の半分が石となっている女性教師がいるそうです。都市管理部、並びに統括局は、女性教師への使用を優先すると発表しており――』


 いつ死亡しても、おかしくない。

 キャスターは湊についての報告を、そう締めくくった。


《せんぱーい? 聞こえる?》


「!?」


 突然の変化で、飛び跳ねそうになる心臓。

 さすがに母は聞こえなかったのか、息子の奇行に首を傾けていた。……さてはて、どうしよう。これ、どうやって会話できるんだっけ?

 変な独り言をする気もなく、俺は頭の中で返事を思い描いてみる。


「――」


《ごめん先輩、口に出してもらっていい? 先輩の頭の中、なんだかゴチャゴチャしてるよ?》


「……マジかよ」


 今度こそ、母は驚きを隠さなかった。

 このままじゃ余計な心配をさせかねない。携帯電話でもあれば通話のフリが出来たんだが、拘束された際に奪われている。

 仕方ないので部屋の隅へ行き、小声で話すことに。


「で、どうした? つーか無事なのか?」


《うん、五体満足だよ。……お母さん、大変なんだってね》


「……」


 どう答えたものか。

 おおかた4号が話したんだろうが、そうなると原因についても教えた可能性がある。紫音は、魔力酔いを発生させるための装置だと。

 下手に出ると彼女を傷付けそうな気がして、口を結ぶ力は強くなった。


《いいよ先輩、気にしなくって。全部4号から聞いたから》


「――そうか」


《母さんを助けるには、神霊石が必要なんだよね? 皆そのこと、知ってる?》


「? あ、ああ、テレビで報道されてるしな。関係者どころか、市民の間にも広がってるんじゃないか?」


《じゃあ、アタシの使ってよ》


 聞き惚れるほどの、清々しい決意だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ