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「? 問題でもあるのか? 母さん」
「あると言えばあります。だって『外』の人達が協力してくれるんでしょう? 裏の意図がないと思いますか?」
「それは……」
否定できない程度には、彼らの下心が予測できる。
実際、番組の方では、確証を抱かせるような報道がなされていた。
『機材を動かすために必要な神霊石は、魔術都市で確保することになりました。神霊石は破壊が義務とされていますが、都市上層部には心当たりがあるようで、準備を急いでいます』
魔科学の動力、心当たり。
頭の中に浮かぶのは二人と一匹――いや、三機のことだ。
キャスターが言ったように、神霊石は発見され次第破壊される。魔術都市内部には基本、蓄えがない。
統括局から情報が与えられているなら、紫音達は候補に上がるだろう。もともと機甲都市の産物なのだから、同族意識だって湧かない筈だ。
「……どういうつもりなんだろうな、連中は」
「恐らくこれを期に、魔科学の本格的な導入を狙っているのでしょう。魔力酔いの対策にも、魔術都市は良い実験場でしょうから」
「怖いもんだ」
俺の視線は、またテレビへと戻る。
しばらくはこの事件を取り扱うようで、統括局の意図を感じてしまう。『外』の出先機関として、十分に役割を果たすというわけだ。
湊らしき人物の情報が、番組に流れる。
『神霊石化の事態は深刻で、すでに身体の半分が石となっている女性教師がいるそうです。都市管理部、並びに統括局は、女性教師への使用を優先すると発表しており――』
いつ死亡しても、おかしくない。
キャスターは湊についての報告を、そう締めくくった。
《せんぱーい? 聞こえる?》
「!?」
突然の変化で、飛び跳ねそうになる心臓。
さすがに母は聞こえなかったのか、息子の奇行に首を傾けていた。……さてはて、どうしよう。これ、どうやって会話できるんだっけ?
変な独り言をする気もなく、俺は頭の中で返事を思い描いてみる。
「――」
《ごめん先輩、口に出してもらっていい? 先輩の頭の中、なんだかゴチャゴチャしてるよ?》
「……マジかよ」
今度こそ、母は驚きを隠さなかった。
このままじゃ余計な心配をさせかねない。携帯電話でもあれば通話のフリが出来たんだが、拘束された際に奪われている。
仕方ないので部屋の隅へ行き、小声で話すことに。
「で、どうした? つーか無事なのか?」
《うん、五体満足だよ。……お母さん、大変なんだってね》
「……」
どう答えたものか。
おおかた4号が話したんだろうが、そうなると原因についても教えた可能性がある。紫音は、魔力酔いを発生させるための装置だと。
下手に出ると彼女を傷付けそうな気がして、口を結ぶ力は強くなった。
《いいよ先輩、気にしなくって。全部4号から聞いたから》
「――そうか」
《母さんを助けるには、神霊石が必要なんだよね? 皆そのこと、知ってる?》
「? あ、ああ、テレビで報道されてるしな。関係者どころか、市民の間にも広がってるんじゃないか?」
《じゃあ、アタシの使ってよ》
聞き惚れるほどの、清々しい決意だった。




