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『ず、随分と潔い決断だね。もう少し考えると思ってたけど』
「紫音いわく、俺は瞬間湯沸かし器だそうッスよ? ――バレるのは時間の問題でしょうし、早め早めに行動した方がいいでしょ」
『でも、僕としては待ってほしいかな。統括局が事態を把握してるかどうか、確定していないんだよ? これが機甲都市の独断とかだったら、敵を増やすだけだ』
「それは……」
『気持ちは分かるけど、もう少し待ってみよう。今、中の様子を探ってるところだから』
「は、はあ」
頷くが、日暮の言葉には驚いた面もあった。
常識的に考えて、統括局のセキリュティは現代最高級のモノが使われている筈だ。それを勝手に覗くという。……灯台もと暗しとは言うが、俺の仲間は案外と凄いのかもしれない。
もちろん、相性の問題もあるだろう。統括局は『外』の連中が世界が管理している場所だ。管理システムに魔科学が使われている可能性は高い。
夢魔を始め、精神系の魔術師なら比較的突破しやすい筈。
「……?」
突然差してきた影に、俺は首を捻る。雲の動きが早いんだろうか?
違う。
ドラゴンだった
始祖魔術でなければまず見ない存在が、統括局に突っ込んでいる……!
『な、なんだい!?』
耳をつんざく轟音は日暮にも聞こえたらしい。
突然の出来事に人々は悲鳴を上げる。局の出入り口を見張っている魔術師達も、突然の攻撃で狼狽を露わにしていた。
こちらにすれば好都合。
中に入る大義名分を、敵が勝手に持ってきてくれたわけだし。
『誠人君!? 聞こえてるのかい!?』
「大丈夫ッスよ。今、ドラゴンが統括局に攻撃しただけですから」
『こ、攻撃? しかもドラゴン? 一体誰が……』
「とにかく、俺行きますんで!」
制止の声はあったような、なかったような。強引に通話を切ったんで分からない。
いつも通りの感覚を得て、俺は大空に飛び上がる。
ドラゴンが入ったフロアは、母と面会した広間の付近だ。とすると、敵の狙いは閉じ込められている魔術師達。阻止するに越したことはない。
ぶち抜かれた穴の向こう。好都合なことに、銀色の背中が晒されていた。




