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 翌日。

 本当に俺の部屋で寝泊まりしやがった紫音を、恨みの目で見ることから一日は始まった。

 とはいえ、先日に比べれば眠れた方だとは思う。ベッドが二つあったお陰だ。もっとも、彼女の添い寝コールは夜中まで続いたが。


 朝食は寮の食堂で。俺と紫音が同室になったことを聞いた学友たちに包囲されたが、まあ平和な朝だったろう。


「昨日のこと、もうニュースになってるんだね」


 質問攻めが終了してから、紫音は食堂のテレビを見上げながら言った。

 襲撃したのが竜明であること、対峙したのが俺であること――包み隠さず報じられている。

 正直、自分の名前を出されるのは勘弁願いたい。出来ることなら抗議もしてやりたい気分だが、やったところで彼らは首を傾げるだけだ。


 希少な行いに名誉を。


 これは魔術都市のスローガンと言っても過言ではない。彼らはとにかく、珍しいものが大好きだ。本人達なりの善意を向けてくれる。

 だが一方、気になることもあった。


「お前、大丈夫だったか?」


「へ?」


「いやほら、テレビ見ろよ。お前も映ってるだろ」


「あ、ホントだ。でも4号は映ってないね」


 どうしてだろ、と眉根を寄せながらも、紫音は平常心を崩さなかった。

 ……あの場で起こったことを、すべて隠せるはずがない。こうしている間にもどこかで、誰かが、二人の存在を広めていたっておかしくない。


「ねえ先輩。竜明さんは、殺されちゃうのかな?」


「……」


 ちょうどテレビでは、魔術都市を管理するうちの一人が映っていた。

 インタビュアーが、初老の男性を前に口を開く。


『実行犯は名門貴族の出ということですが、処罰はどのようになさるおつもりでしょうか?』


『彼は以前から問題のあった人物で、テロ組織を率いているとも噂されております。死をもって罰する以外、我々が選ぶ道は存在しません』


 明確な敵意が籠った宣告は、朝の食堂に似合わないことこの上ない。

 まあこれについては想定内だし、恐らく外の連中も放置しないだろう。治安が悪化している印象を与えれば、飼い殺しという目的は達成できなくなる。


 ただ。

 兄が処刑されるのだとすれば、責任は俺にもあるということになる。捕らえた功労者でもあるわけだし。

 素直に受け入れられるかどうかは、難しい問題だ。

 加害者になる覚悟が、俺にはないんだから。


「……いいの? 先輩」


 食パンにジャムを塗りながら、紫音は問いをぶつけてきた。

 俺はうんともすんとも言わず、黙々と顎を動かしている。……まったく。こっちが悩んでる時に、そう易々と質問しないでほしい。

 とはいえ、彼女なりの心配が表れているとも受け取れる。怒る前に、気を遣わせている自分が恥ずかしい。


「紫音だったらどうする?」


「へ?」


 少しイジワルなカウンター。

 彼女は困惑して、フォークの動きを止めてしまった。

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