表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/98

「ちょ、ちょっと2号!?」


「アタシだってこれぐらい出来るんだからね!」


 視界でも塞ぐ魂胆なのか。紫音は見事に機竜へと乗り移る。

 そのお陰か、竜明の手元は狂っていた。俺を殺すことよりも、邪魔が入ったことが心底許せないらしい。


『この出来損ないが! 邪魔をするな!』


「うあっ!?」


 勇敢な行動をしたとはいえ、所詮はただの少女。

 掴み、投げ飛ばそうとする竜明にはまったく抵抗できなかった。コンクリートの壁に勢いよく叩きつけられ、そのまま床に倒れていく。


『おい』


 自分と敵に向けられた激情。

 形成を逆転させる火薬としては、十分すぎる。


『!? 貴様――』


『おおっ!!』


 紫音に指摘された箇所。

 解術装甲の弱点を、ただ全力で打撃する――!


『ぐ、お……!』


 手応えあり。竜明の嗚咽が聞こえ、機竜は真っ逆さまに吹っ飛んだ。11号は直前で離脱してしまったが、文句は言うまい。

 即座に姿勢を立て直す兄。機体には異常が生じているのか、関節部分がショートしている。

 怒りに狩られるまま、俺は眼下の敵に飛びかかった。


『貴様、貴様、貴様あああぁぁぁあああ!』


『好き勝手吠えてろよ……!』


 拳を叩きつける。

 それだけで機竜の装甲はひしゃげていた。竜明はパニックから、悲鳴に近い叫び声を上げ続ける。

 展開される魔弾は、どこか味気ないものに見えていた。加速する光景の中、隙が明確に理解できる。

 俺の接近に伴い身構える竜明だが、もう遅い。


『ぬ……!』


 一撃叩き込んで、姿勢を崩した直後。

 至近距離の竜砲が、機竜の躯を包み込んだ。

 直後に響いた轟音は俺の勝利を確定させる。機竜は直線に作られた通路の奥で、煙を吐き出しながら仰向けに倒れていた。


「が、ぐあああぁ……」


 動かなくなった機竜から、竜明は息も絶え絶えの状態で這い出てくる。


 その身体には明らかな異常があった。

 右腕。まるで石を移植したかのように、光沢と凹凸が彼の肌から生えている。


「神霊石――」


 間違いない。

 竜明から生えているのは神霊石だ。剣山よろしく、いくつもの石が皮膚を突き破っている。腕としてのまともな機能は、あのままだと期待できまい。

 俺は、肉親へ起こった変化に唖然とするだけ。


「くそ、くそっ、くそっ……!」


 竜明は逃げようと必死だった。

 4号辺りが助けようとするのかと思えば、彼女の姿はどこにもない。……一体何をしに現れたんだろう? ただの援護にしては、機会が少なかった気がするが。

 やがて、駆け付けた治安部隊が竜明を拘束する。


「くそっ、お前ら離せ! 離せええぇぇええ!」


「……」


 勝った気分になれないまま、俺は事の顛末を見届けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ