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『な、なんだお前!? どうして――』


《サキュバスの能力だよ。いまお兄ちゃんから色々情報を貰ったから、アタシもサポートする!》


『さ、サポートって……』


 言っている間に、店の前へ機竜が来た。肩には4号が乗っている。

 兄の操る機体は口を開くと、誰かと同じように莫大な魔力を溜め込んだ。

 それが何を生み出すかは、俺自身よく分かっている。


『く――!』


 頬を焼く、灼熱の閃光。

 俺が叩き込まれた店は、エネルギーを逃しきれず爆発する。中にあった物は欠片さえ残らず、塵芥ちりあくたと化しているだろう。


『くそっ、竜砲まで真似るとはな……』


 脱出には成功したものの、問題は積もるばかり。

 竜明はゆっくりと、宙に逃げた俺を見上げる。機竜自体にはそれらしい表情が無いのに、余裕の笑みを零しているような錯覚があった。


《先輩、あの機竜には弱点があるよ。中にお兄さんが入って動かしてるんだから》


『い、いや、それじゃあ逆に無敵だろ。解就装甲なんて殻に閉じこもってちゃ――』


《魔力酔い》


 状況を覆すキーワード。

 機竜と4号が放つ魔弾を見ながら、相棒の言葉に注意を向ける。


《機竜そのものは魔科学の産物だから、神霊石で動いてることになるでしょ? 密閉空間で長時間動かし続ければ、魔力酔いになるんじゃないかな》


『つまり、喚起っぽいことをする部位があると?』


《そう。お兄ちゃんの資料にも書いてあるし、間違いないよ。位置は人間でいうと肩甲骨の間あたりかな。……狙える?》


『当然』


 魔弾が来る。

 さして広くない空間をすべて活かし、回避と撃墜の二手を断行。ショッピングモールそのものには爪痕が刻まれていくが、俺も兄も一瞥さえ向けなかった。

 砕かれるコンクリート、飛び散るガラス片。

 交差する力と力。轟音が鳴る度に、戦場に漂う熱量は増していく。


『――!』


 向こうも弱点については意識しているようで、背後を晒すような愚は犯さない。

 逃げ回る。

 接近戦になれば明らかに不利な以上、背中を取るまでは迂闊に仕掛けられない。直前の繰り返しになるだけだ。

 もちろん、相手には関係のないことだが。


『つまらないだろ!? それじゃあさぁ!!』


 動きが速い。こちらが魔弾で動きを縫われている間に、懐へ飛び込んでくる。

 横一直線に走る爪。触れれば一撃で、俺の身体は真っ二つだ。切断となってしまえば、始祖魔術による再生能力も役に立たない。

 負ける。


「こんのおおぉぉぉおお!」


『!?』


 戦場にいる全員が目を見張った。

 一つ上の三階から。竜明の機竜めがけて、避難した筈の紫音が落ちてくる……!?

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