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『って、話が反れてしまったね。とにかく僕からは、妹をよろしく頼む、とだけ言っておくよ』
「喜んで。……でも、どういう方法なんスかね? 紫音を使って処刑するって」
『さあ……まあ彼女に、何かしらの兵器が搭載されている可能性は高い。くれぐれも、攫われたりしないようにしてくれ』
「了解ッス」
そうと決まれば善は急げ。通話を切って、フードコートにいる紫音の元へ。
彼女はさっそく店の前に並んでいた。表に出ている看板には、何種類かの親子丼が。悪くないので、俺もここにするとしよう。
紫音は最後尾におり、自然と俺の存在に気付いた。
「あ、先輩。電話はもう終わったの?」
「ああ。紫音はここの店にするのか?」
「うん、たまにはお肉もいいかなー、と思ってね。食べ過ぎると太るから、無理は出来ないけどさ」
「ふうん……」
アンドロイドって太るのか? と疑問が浮かんでくるが、やはり頭の片隅へ蹴り飛ばした。
……くそ、どうも決意が甘い。彼女の正体がなんだろうと、味方をするって決めたばかりだろうに。人との違いを聞き出してどうする気だ。
「先輩」
「お、おう?」
「聞きたいことがあるなら、聞いてくれていいよ? その方が楽だし」
見事に、考えは透けていたらしい。
俺は何も返せず、気まずさから頭を掻くだけだ。
「――スマン」
「謝る必要ないよ? アタシは元からそういう存在なんだから、知りたいんだったら教えるって。でないといつも通りじゃないでしょ?」
「お、俺、いつもデリカシーに欠けた質問してたのか?」
「うーん、そういうわけじゃないけど……ま、単にアタシが話したいってだけかも。先輩にはちゃんと知っててもらった方が、安心するし」
「……」
向けられている信頼に言葉が詰まる。
なら、応えてやらなきゃいけないんだろう。
「あ、ちなみにアタシ、女性器はあるから! 先輩が発情しても大丈夫だよ!」
「お前は公衆の面前でなに言ってんだ!? 羞恥心を持て!」
「またまたあ、先輩だって気になってたんじゃないの? 男女の間柄って、結局はそこに行き着くんだしさー」
「他に夢はないのかよ……子育てとかあるだろ」
「確かに重要だね。だったら養子でもとろっか? 先輩は何人家族がいいの? やっぱり四人ぐらい? 一人っ子だと、さすがに寂しそうだしね」
「……しばらく質問に答えるのは止める」
とんだ地雷を踏み抜きそうだ。
いや、もう一発は踏んでいるらしい。周囲の生々しい視線が、隠すことなく浴びせられている。大声で反応したのが失敗だった。
「あー、先輩の所為だよっ! 罰としてアタシと付き合って下さい」
「ついに脅迫か!? ――って、前から一つ気になってたところがるんだが」
「なに?」
「……お前、俺のどこが好きになったんだ?」
聞き辛い人には聞き辛くて、しかし気になって仕方ないコト。
妙に緊張し始めた俺とは違って、紫音は何食わぬ表情のままだった。