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「誠人君も可愛い子ねえ。殴るのはOKでも殺すのはちょっと、ってところ?」


「まあ……って、俺のことはいいッスよ。とにかく紫音のことは、現時点じゃ考えられな――」


「だったら、妹であることを教えて上げてもいいんじゃない?」


 残忍にすら聞こえる提案。

 でも湊にすれば、一つの優しさではあるんだろう。


「いつまでも隠してたら、反動も大きくなるわよ? 紫音が誠人君のことを愛してるのは、嘘偽りない事実なんだし」


「そりゃそうッスけど……」


「ああもう、じれったいわね! とにかく男なんだから責任は取りなさい! あの子を惚れさせた責任を!」


「つまり、付き合うか付き合わないかさっさと決めろと?」


「ええ。理解の早い生徒は好きよ?」


 しかし、無茶は無茶だ。


「あ」


 心で思い、口にも出そうとするが、一瞬のうちに湊の姿は消えている。

 残された俺は、誰もいない虚空へと手を伸ばすだけ。人気のない場所では余計に寂しく感じられる。


 ――でも彼女の言っていることは、いずれ向き合うべき問題だ。


 避けるのはそれこそ無責任。サキュバスの件うんぬんの前に、俺は紫音に対して行動を起こさねばならないだろう。


「……ていうかアイツがサキュバスなのって、機甲都市でつけられた能力なのかね?」


 もともと、生粋の魔術師だった連中の町だ。それぐらいの技術、研究が行われていても不思議じゃない。


 だからもう一つの情報も、なおさら考えねばならなくなる。

 処刑。

 彼女は、貴族を殺すための道具と称されて運ばれた。いつまでも放置できる問題じゃない。


「っつっても、本人は覚えてないって言ってたし……」


 機甲都市に聞くか? まあ接触する機会が皆無なんだが。

 洞窟で遭遇したもう一人の紫音。彼女を捕縛できていれば、解決の糸口も見えたろうに。


「――ま、今は食事の方か」


 俺は気合を入れるため、両手で頬を軽く叩く。

 早く、責任が取れる人間になるために。

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