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「へ……」
「別にいつもと変わらんだろうに。だいたい人付き合いなんだから、迷惑かけるのは当たり前だ。俺はちゃんと、お前と人付き合いしたいんだよ」
「せ、先輩、それはアタシと付き合ってくれるってこと!?」
「気が早いわ! 少しは落ち着いて考えろ!」
「え、落ち着いて受け取った結果だよ?」
「ぬぬ……」
叱ってやりたい気持ちになりながらも、俺は安心感を覚えていた。
そうだそうだ、これでいい。紫音はいつものように恋愛脳で、何も考えずハシャいでいればいいんだ。
面倒なことは俺が全部、片付けてやればいいんだから。
「と、とにかくだな、自分がアンドロイドだとか、気にしなくっていい! 俺はそのお前と、ずっと一緒にいたんだしな」
「そ、そう? もしアタシが彼女になっても、嫌じゃない?」
「……仮の話だったら、別に」
「ホント!?」
すでに告白を受け取ってもらった気分なのか、紫音は目を輝かせている。
一言注意したいところだが、止めることにした。喜んでいるときに水を指すのは好ましくない。……今回限りのしておきたいもんだが。
一通り妄想に耽って、彼女は改めて俺を見る。
「そ、その、不束者ですが、よろしくお願いします」
「直前の流れを見ると明らかに勘違いしてそうだな……まあ、改めてよろしく頼む」
「うんっ!」
単純なやつめ。
でも幸せなんだろう。いや、そうであってほしい。俺の存在が、紫音にとって迷惑ではない証明のために。
自分勝手なのは分かってる。
でも人間、いつも基準は自分自身だ。どれだけ他人の理解に努めたって、他人という垣根は越えられない。
俺は紫音の痛みは分からないし、分かっちゃいけない。
だから、せめて。
いつも通りでいて欲しいと願うのが、俺に作れる幸福だ。
「ところで、どうするんだ? 湊さんとか、あそこにいた魔術師には」
「うん、ちゃんと言うよ。少なくともお母さんには絶対話す」
「俺も付き合うか?」
「……えっと、じゃあお願いします」
紫音は椅子の上で前屈みになって、俺の提案に驚いている。
もちろん、頷く以外の選択肢はない。