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「……うん、分かった、話す。先輩にはいつもお世話になってるし、隠し事するのはいけないことだよね」


「無理はしなくていいからな?」


「え、そこは厳しく言ってくれていいよ? 甘えちゃいそうだし」


「いや……」


 大切な仲間が勇気を振り絞ってる中、追いたてるような真似はしたくない。

 紫音が気持ちを整えている間、俺は壁に寄り掛かって待機する。こういう時は下手に喋るより、黙っていた方が背中を押せると信じて。


 いや、背中を押されるべきなのは俺かもしれない。


 これまでとは違った形で、脈は力強く打っている。

 作られたと、紫音は口にしたのだ。それは彼女が人間ではない証拠であり、除去法から機甲都市の産物ということになる。

 俺が知っている人間の紫音は、どこに行ってしまったのか。あるいは、紫音はもともといなかったのか。

 事実を隠されていた怒り。目の前にいる少女への親愛。

 二つの感情が混ざり合うのを、制御するので一杯だった。


「アタシ――っていうか、新崎紫音はね、小さい頃に死んでるんだって。病気って言ってかな」


「え……」


「それにお父さん達が納得できなくて、機甲都市に頼ったんだって。でもさすがに死者を蘇らせたりは出来なくて、新崎紫音が成長するとしたら、って予測でアンドロイドを作った。――それが、アタシです」


「……」


 開いた口が塞がらず、彼女の言葉を頭の中で繰り返す。

 死んでいた、納得できない父親、アンドロイド。

 想像なんてしていなかったし、父がそんなことをしていたのも驚きだ。確かにあの人だったら、やってもおかしくないだろうけど。


「じゃあ、ひと月前にいなくなったのは――」


「身体のメンテナンス、かな。定期的に向こうへ行かなきゃいけないの。……今回はちょっと、他にも色々と弄られたみたいなんだけど」


「ってことは、入れ替わりは定期的にやってたのか?」


「うん……その、ごめんなさい」


「謝らなくっても大丈夫だぞ?」


 だって最初から、紫音一人でどうにかなる状況ではない。俺が起こるのは筋違いだ。

 むしろ自分自身を疑いたくなる。どこかで、彼女に負担をかけやしなかったかと。


「なあ、湊さんや部長は知ってるのか?」


「たぶん知らないと思う。機甲都市の方は、隠すのに協力的だったから。こっちの人達は……まあお母さんとか、助けに来てくれた魔術師さんには知られちゃったかな」


 溜め息を交えながら、紫音は天井を見上げている。

 その横顔にはどことなく影が差していた。普段から天真爛漫に振る舞っている分、余計に影は濃く見える。

 どんな言葉で慰めればいいのかなんて、直ぐには思いつかない。


「と、とりあえず、迷惑はかけないようにするね。先輩も、アタシばっかりに構ってられないでしょ?」


「……」


 構ってばっかりいる気がするのは、俺の勘違いだろうか?

 まあいい。彼女が彼女らしくないことを言い出しているのは確実だ。ここはきっぱり、正しい要求を突きつけよう。


「迷惑かけてくれないと困るぞ? 俺は」

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