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養子に出た妹が誘惑してきて、妹だなんて忘れたい  作者: 軌跡
第三章 日常に牙は潜む
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「そ、読んで字のごとく機竜だね。本物さんの身体をいろいろ調べてさ、それで作ったの。どう? そっくりでしょ?」


「……」


 そっくり、なんてもんじゃない。

 体格は俺が竜化した時の倍以上がある。神霊石の大きさと比べても遜色ないぐらいだ。機甲都市の品であることは間違いないだろう。


 オマケに、洞窟の天井を貫くほどの火力。

 巨体が何の問題もなく通れる穴は、俺だったら絶対に開けられない。


「それじゃあ実験開始だね。あ、逃げようものなら町が焼き払われるだけだから、よろしく」


 言いつつ、紫音は足元へ伸びてきた機竜の手に乗る。

 俺はそんな様子を見ながら、苛立ちを募らせるだけだった。


「お前……!」


 あっちには、本物がいるんだぞ。

 問答の時間は終わりだ。俺はいつも通りの感覚で、ドラゴンの外郭を作り上げる。二体の偽物を、まとめて駆逐するために。


 黒い、竜。

 太陽の光を裂き、黒銀の翼が顕現する――!


『行くぞ……!』


 肉体が切り替わった一瞬。数倍の体格を持つ機竜に向け、黒の一閃が突っ走った。

 敵の反応は鈍い。巨体だからか、それとも基準としてそうなのか。懐へ潜り込んだ時に、ヤツはようやく片手を上げているぐらいだった。


 拍子抜けにもほどがある。動力部がどこにあるか知らないが、一撃で破壊してやろう。

 鉄よりも高い甲殻に包まれた拳を、機竜の胸元へ滑り込ませる。


『!?』


 成果は出ない。

 消えている。

 機竜に触れるか触れないかの距離で、俺の身体が消えている……!?


「残念でしたー。この子、魔力で構成されたものは一切通用しないよ。――その身体、実態があるっていっても魔術だもんね?」


『っ……!』


 駄目もとで追加の一撃叩き込もうとするが、死角から飛んできた光に妨害された。

 即座に飛び退くと、その正体が目に入る。


 光の弾丸。魔術により作り出された、魔弾と称される軍勢が襲いかかる。


 撃っているのはもちろん機竜だった。身体の動きに反して、魔弾を生成する速度はかなり早い。威力の程も、掠るだけで分かってしまう。


『くそ……っ!』


 どうにかして機能を無効化しなければ。このままでは徐々に追い詰められる。

 魔弾を躱し、叩き落としながら、俺はVの字に進路を変えた。


 弾の密度が上がるが構わない。自慢の甲殻が徐々に剥がれていくが、それだって無視してやる。致命傷さえ受けなければ後はどうだってなる筈だ……!


『――!』


 俺の身体を丸ごと吹き飛ばすような、巨大な一撃。

 避けるだけの余裕もなく、真っ向から激突する。

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