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奥に進んでいく度、辺りの空気はどんどん広く、そして重くなっていく。まるで身体の一部が水に浸かっているような感覚だ。
「こりゃ、確かに大物だな……」
少なくとも俺の経験では一番。もし並の魔術師が同行していたら、すでに失神していてもおかしくない。
足取りは勝手に慎重さを帯びる。これだけ魔力の濃度が高ければ、魔獣の類が出現してきても無理はないだろう。
竜化する気構えで、俺は一歩一歩前に進んだ。
突然、開けた場所に出る。
「――っと、これか」
十メートル強はありそうな天井。そこを打ち上げるように、堂々とそびえ立つ鉱石が一つ。
神霊石だ。青白い光を帯びており、表面には光が渦巻くように動いている。
デカイ。これまでだったら、珍しくても五メートルぐらいの大きさだった。が、目算するところその倍である。これは確かに酔うわけだ。
さて、問題はどうやって破壊するか。
五メートル級の神霊石でも、破壊しきるのに一時間はかかる。これも同じか、それ以上を予定した方がいいだろう。
「でも時間かかると、俺まで酔うしな……」
そこが一番の課題だった。
とにかく行動しよう。何もしないでいれば、その分時間は無駄になる。こうして付近にいるだけで、タイムリミットは削られているわけだし。
俺は身体の内側へ意識を向け、竜化の準備に入る。
直後だった。
「あー、ちょっとストップ」
聞こえてはならない声が、俺の耳に入ったのは。
巨大な神霊石の横。暗闇の中から、小柄な少女が歩いてくる。
「紫音……!」
「んー、違うよ? アタシは、君の知ってるあの子じゃない」
「っ、偽物か」
ご明察、と満足気に破顔して、彼女は神霊石の横に立つ。
これといった照明は持っていない。機械らしく、暗闇でも目が効くんだろうか?
「――なにしに来た?」
「むむ、怒ってる? 昨夜戦った時は怒ってなかったのに」
「あれは例外だぞ。アイツが決めたことなら、背中ぐらいは押してやろうと思ってただけだ」
「その割には、好意を向けられても答える気がなそうだね?」
「……耳の痛い指摘だな、おい」
相手の会話に乗っかりつつ、俺は敵の状況を分析する。
偽物の周囲に味方の姿はない。こっちに敵意があることは承知の上だろうし、一対一で戦うつもりなんだろう。
――が、魔術師用の甲冑を持ってきていない。女の細腕でやり合う気か?
「やだなあ、勘違いしないでよ。アタシが直に戦うわけないでしょ?」
「……」
「アタシはあくまでもコントローラーというか、見届け役というか。君の相手は別だからね?」
「は……?」
直後だった。
神霊石の頭上。光を閉ざしていた分厚い岩盤が、木っ端みじんに吹き飛んだのは。
「な――」
聞こえたのは、耳を聾するような金属音。
ゆっくりと降りてくる姿には、嫌というほど見覚えがあった。
といっても形だけ。身体の表面は、すべて金属で作られている。鎧というわけではなく、肉体の一部として。
向けられる双眸には無機質な光。これはどう見ても、
「機械の竜……!?」




