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養子に出た妹が誘惑してきて、妹だなんて忘れたい  作者: 軌跡
第三章 日常に牙は潜む
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「そ。だったら厳重に保管しろって結論になるんだけど……神霊石って膨大な魔力を放ってるから、普通の魔術師だと酔っちゃうのよ。誠人君みたいなのは例外だけど」


「ふうん……」


 紫音は変わらず、俺の身体を左右に揺らす。なんだか気分が悪くなりそうだ。

 と、噂をすれば何とやら。目的の駅名がスピーカーから聞こえ、湊と紫音が腰を上げる。


 俺達の他、下車する人間は多くない。もともと神霊石に関わっている連中が使っている駅だからだ。お陰でガラスの向こうに見える光景も、これまでの街並みとは趣向が異なっている。


 降りた駅の向こうにあるのは、広々とした山岳地帯。

 改札口の方に歩いてみれば、直ぐ警備員の姿が見つかる。昨夜戦った魔術師と同じく、甲冑を装備した物々しい人達だ。


「さて、あとは私と誠人君で行くわね。紫音はここで待ってて」


「はーい」


「……紫音、一体何しに来たんだよ?」


 てっきり我儘わがままを言うと思ったんだが、想像以上に聞きわけが良かった。

 彼女は短い前置きを作って、山の反対にある都市部を指差す。


「ちょっとお母さんと買い物にね。お兄ちゃんが今朝持ってきた物だけじゃ、いろいろと足りなさそうでさ」


「そっか。じゃあまた明日、学校でな」


「うんっ」


 いつものように口端を上げる紫音。こりゃあ、明日の学校は休めそうにない。

 ホームに一人少女を残して、俺は警備員の元へと向かっていった。

 改札口を出た後、まずは荷物のチェックから。続けて魔力の検査など、しばらく動けない時間が続いていく。


「――登録番号、確認しました。始導院誠人様ですね。どうぞ、お通りください」


「どうも、お疲れッス」


 浅い会釈を残して、俺は駅の構外へと踏み出した。湊も直ぐにあとを追ってくる。

 山を囲む森に入った途端、空気の重くなる感覚があった。

 恐らく神霊石による高濃度の魔力だろう。生身のままで長時間いるのは、あまり好ましい選択ではなさそうだ。


「湊さん、大丈夫ですか?」


「今のところはね。魔力酔いを止めるための薬飲んできたから。……っていっても30分持つか持たないかなんだけど」


「あとは俺一人で大丈夫ッスよ? 紫音も待たせてるんですし」


「そうれはそうだけど……少し見たいのよ。今回の神霊石、結構な大物らしいから」


「さすが元学者ッスねえ」


 万が一の際は、力尽くで連れ出すとしよう。

 先頭に立って歩いて行くと、目的地は直ぐに見つかった。やはり騎士風の警備員が二人いて、その間には大きな洞窟の入り口がある。


「お、お待ちしておりました……早めの破壊をお願いします」


「は、はい」


 どうやらかなり酔っているらしい。フラついた足取りが何よりの証拠だ。これじゃあ洞窟を警備する前に、医から警備される立場になるぞ。

 しかし片方はギリギリ大丈夫なようで、魔力にあてられた相方へ肩を貸している。


「――湊さん、やっぱり止した方がいいんじゃないッスか?」


「そ、そうね、自信がなくなってきたわ……誠人君も、なるべく早く帰ってくるようにね」


「もちろんッスよ」


 俺は片方の警備員から懐中電灯を受け取り、洞窟の中へと踏み込んだ。

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