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養子に出た妹が誘惑してきて、妹だなんて忘れたい  作者: 軌跡
第三章 日常に牙は潜む
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「ふうん……」


 納得してくれたようで、紫音は何度も頷いている。


「格好悪いねー、先輩」


 容赦ない事実を叩きつけてくれたわけだが。


「おっしゃる通りで……」


「男だったらビシッと決めなくちゃ! サキュバスなんかに頼ってないで、自力で解決するべきじゃない?」


「うっ」


 おっしゃる通りで。

 俺はパンを食うことも忘れて、彼女の言葉を反芻はんすうする。ビシッと決めろ、自分で解決。確かにベストな選択だし、他人に縋るのは甘えでしかない。


 でも方法は?


 十数年積み立てた感情を、どうやったら覆せる?


「――ま、いいよ。アタシが何とかしてあげる!」


「は、はあ? お前なに言って……」


「いやアタシ、サキュバスだから」


「!?」


 衝撃の告白へ目を見張ると同時に、俺は内心でかぶりを振った。

 有り得ない。ドラゴンに対する適正なら理解できるが、サキュバスは完全に畑違いの筈だ。


「し、紫音、そもそもサキュバスがどんな存在か分かってるのか?」


「知ってるってばー! 先輩と同じ始祖魔術の使い手で、夢の中に出てくるんでしょ? 戦闘力皆無の珍しいタイプなんだってね」


「あ、ああ、そうだ」


 俺は疑いの目を晴らさないまま、彼女の正解に首肯する。


 古来、魔術師は神や幻獣の子孫だとされていた。しかし代を追うごとに特性を失い、ただの人に近くなってしまった経緯を持つ。

 このため魔術師たちは、生まれてくる子に先祖帰りを起こそうとした。

 その結果が、俺や兄貴。紫音だって、ある程度は同じ現象を起こしている筈。


「先輩は先祖帰り起こしてる魔術師だもん。アタシだって、始祖魔術のことは調べてるよ?」


「……で、サキュバスって証拠は?」


「今から寝よっか? 腹の皮張って目の皮たるむ、って言うでしょ? それに今なら限定で、アタシの膝枕付き!」


「遠慮します」


「えー!」


 やるんだったら夜でも構わないんだし。

 にしても、紫音は自信満々の表情だ。ひょっとすると本当に、サキュバスとしての能力を持っているんだろうか? ゲノム操作するようなものだと思うんだが……。


「――まあ仮に事実だとしたら、今夜改めて話す。夢の中でな」


「いいよ。あ、でも、やるんだったら条件付きね?」


「じょ、条件?」


 嫌な予感しかせず、思わず上半身が引いていた。

 紫音が浮かべる満面の笑みには、子供らしい無邪気さがある。イタズラを企んでいるのが一目で分かった。


「恋人」


「へ?」

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