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養子に出た妹が誘惑してきて、妹だなんて忘れたい  作者: 軌跡
第三章 日常に牙は潜む
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 挨拶に対する反応は、意外にサッパリしていたと思う。

 まあ当然だろう。学年こそまたいだが、会っていない期間は半年とちょっとだ。俺個人としても、そう騒ぎ立てないのは気持ちの面で楽である。


「で、そっちはどうだった?」


 時間は昼休み。

 購買でパンを買ってきた俺と紫音は、中庭で同じ時間を過ごしている。

 辺りには適度な人気があって、居心地の悪さを感じさせない。俺達がいようといまいと変わりない日常が、様々な場所で繰り返されていた。

 もっとも。

 紫音へ集まる視線だけは、俺がどうこう出来るものでもなかった。


「いやー、大変だったよ。もう質問攻めでさ。先輩との関係についても聞かれちゃった。えへへ」


「……なんて答えたんだ?」


「大声で言うのが難しい関係、って言っといたよ!」


 要修正ということか。

 彼女の自由奔放さに呆れながら、俺は購入したばかりの焼きそばパンを口に運ぶ。


 別段、懐かしむような味ではなかった。昨日までだって、ほとんどの場合はこれ食ってたし。自販機で買った飲み物に至るまで同じである。

 うん、いい加減飽きてきても良さそうだ。

 しかし今さら変えるわけにもいかない。隣の紫音と交換するにしたって、勘繰られそうで嫌だし。


「むむ! 先輩、物欲しそうな目してない?」


「……してない。してないったらしてない」


「怪しいなー。あ、もしかして何日もお昼の内容が同じだから、飽きてきたんでしょ? そこでアタシの餡パンと取り換えっこしたいわけだね?」


「――」


 さすが幼馴染様。よくご存じで。

 思わず頷きたくなるが、直前でグッと堪えた。


「と、というかだな、お前弁当作らなかったのか? 俺に手料理をご馳走する、とか息巻いてただろ?」


「お、先輩はアタシの手料理が食べたいんだね? 分かった、明日から作ってみるよ。皆にも自慢しちゃおーっと」


「……」


 墓穴を掘ったような、その上からさらに土を被せてしまったような。

 いや落ち着け。昨日みたいに、一緒の部屋で寝ることはしばらくない筈だ。理性が音を立てて崩れていく事態にも陥らない筈。

 だって学生寮だぞ? 男女が同じ部屋で生活するなんて、聞いたことがない。


「あ、そういえば先輩、あの話」


「? 何の話?」


「ほら、サキュバスを探してる理由。話そうとしてたでしょ? 教えてよー」

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