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養子に出た妹が誘惑してきて、妹だなんて忘れたい  作者: 軌跡
第二章 新生活・魔術都市
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「いただきます」


 一人で暮らしていた頃に比べれば、随分と騒がしい朝。

 今日でしばらくお預けになると思うと、寂しがっている自分がいた。


「――そういや、昨日のは何だったんだ?」


「昨日のって、アタシが入ってたカプセルのこと?」


「ああ」


 夜のうちに聞こうと思っていたが、結局タイミングを逃してしまった。

 口の中をカラにして、紫音は唇に指を添える。――思案しているのが分かる動きだが、ちょっとした色気の方が俺には印象的だった。


 赤くて艶のある、柔らかそうな唇。


 まるで最初から、紅を塗っているような妖艶さ。幼い容貌には似合わないのに、それが余計に印象を強くする。


「身体を弄られた記憶は、あるような無いような」


「い、弄られた? 誰にだよ?」


「機甲都市」


「っ――」


 魔術師にとっては、禁句にも近い単語。

 因縁の相手が絡んできたとなれば、俺の意識も自然と切り替わる。


「そりゃ、何かの実験ってことか?」


「分かんないよ、記憶もあやふやだし。でも先月に誘拐されて、今日まで向こうにいたんじゃないかなー、とは思ってるよ?」


「ちょ、ちょっと待て! じゃあそれまで俺が見てた紫音は――」


「偽物のアンドロイドじゃないかな?」


 気にした様子もなく、ざっくりと告げる彼女。

 反して、俺は薄気味悪い気持ちしか抱けなかった。彼女の誘拐された期間が事実だとして、その間は少しも違和感を抱かなかったのだ。

 同時に、不甲斐ないと自分を叱りたくなってくる。何年も付き合いあるんだから、気付けよ。


「……しかし機甲都市ってなると、政府の方も関わってそうだな。連中、裏で手を組んでるって話だし」


「あー、有名だよね、それ! 昔の貴族を機甲都市との密約で叩いたのに、今度は自分達がやってるんだもん」


 情報が表に出たら、どうなるんだろう? ま、詭弁しか聞こえないだろうけど。

 食事の手を遅くしながら、俺達は重い話題を続けていく。


「でも現政府と機甲都市の関係は、切り離すなんて無理だろうな。魔術が普及したの、連中の協力があったからって噂だし」


「ひょっとして今の政府自体が、機甲都市に操られてたりするのかな?」


「多少は操られてるだろ。何せ、貴族が失墜したのは魔術の普及が原因だからなあ。発端の内乱自体、ある程度演出されたモンだったんじゃねえの?」


「嫌な真相だねえ……」


 うん、朝っぱらから話すことではないだろう。

 しかし俺も紫音も、話題から生み出される空気を押し退けようとはしなかった。必要なことだと感じて、黙々と箸を進めていく。


「……お兄ちゃんに聞いたけど、今の政府が気に入らないから先輩は戦ってるの?」


「まあな。他にもちょっと、理由はあるんだが――」


「?」


 こればっかりは紫音へ話しても仕方ない。気にすんな、と無理やり話を区切る。

 意外と素直に納得してくれて、食事の場は無言の色が強くなった。


「――サキュバス、でしょ?」

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