序章 三賢者の絆
失われた記憶の断片が少しだけ回収されました
わたくしが、この電脳異空間へ来る前のお話
今は・・・か弱くて健気な少女のような姿で
想い人も少年の姿をしていて
全く違う人生を歩み進めていましたが
富士地区の樹海で発見されたサファイアと
全てを知る存在である女神リーアと
その二つの因果が重なり
わたくしは少女トール=ガーネットから
前世の三賢者の一人であるトール姫としての記憶を思い出した
元々ではなくて、仮の宝石であるガーネットから
本来のサファイアとなり
更にリーアの介入により
トール姫の自我が強く出るようになった
『リーアさん、わざわざわたくしを覚醒させるなんて・・・ラインさんのためですか??』
『あなたには、色々と行動してもらうことになりますが、自分の本心を貫いてもらいたいだけです』
このリーアさんという方は、どうも信用できませんわね
闇属性のアメジストを保有している女神だからでしょうか・・・
嫌な雰囲気を隠しているつもりなのでしょうが
全くもって、隠しきれていません
『あなたのご好意は、存分に使わせてもらいますが・・・思惑通りにはなりませんわよ!!』
きっぱりと宣言しておきました
どうせ、どのように動いてもこの方の思惑なんだと思いますから
せめて自分の気持ちだけはしっかりと保っていたかったので
『ふふふ・・・トールさんとレッドさんの一番激しかった恋愛模様でも、楽しんでもらいましょうか』
何から何まで、気に入りませんわね
しかし・・・
レッド様との一番激しかった、あの話は・・・思い出しただけで、身体中が火照ってしまいますわ~♥
折角ですから、ここもリーアさんの思惑に加担してしまいましょうか
わたくしも・・・この火照りを少しでも冷ましたいかと思いまして
うふふ・・・それでは、記憶の中のわたくしと交代しますわね~♪
・・・・・・・・・
【時間と空間の魔女】である【世界の頂点】と称される【沢渡順子】さん
そこまでの能力はありませんが
三賢者の中心的叡智である、わたくしでも
ある程度の空間掌握は可能です
それに、過去の回想ですから
当時と今の心境や思惑を同時にお伝えできるかと思いますわ
亡き父より受け継いだ国を統治していた、わたくしは
戦乱の悪い時代に嘆いていました
統一した隣国を合わせ
それぞれの姫により新たな王政を確立させて
三賢者として
炎の化身レーバティンを従えたロキさんと
嵐の化身グングニルを従えたオーディンさんと
雷の化身ミョルニルを従えた、わたくしトールの3名
小柄で一番の知識を持つロキさん
頼れるリーダー的存在
見た目は幼女みたいですが、素敵な大人の女性です
容姿にコンプレックスがあるようで
子供扱いされることを毛嫌いする
可愛らしさ溢れるオーディンさん
わたくしとは幼き頃より交流があり
ロキさんよりは、仲良しかもしれません
恥ずかしがり屋で、人見知りな部分があったりします
そして・・・
それぞれに仕えてくれる化身さんですが
ロキさんのレーヴァティンは長身の美麗な大人の女性
オーディンさんのグングニルは小柄でキュートな少女
わたくしのミョルニルさんは天真爛漫な小悪魔的な少女
姉妹のような間柄ですかね
と~っても、仲良しさんですわ
この方々と、乱世の時代を統一するべく
国を挙げて戦いを収める活動を開始しました
既に亡き父がある程度の進軍を試みており
この惑星の半分近くは統治下となっていましたが
まだまだ、争いは収まる事を知らず
沢山の民が犠牲となっており
一刻も早く事態を収集して
平和な世界を築きたいと思っております
『なぁ、トール・・・飴持ってないか~??』
『飴ですか、ありますよ・・・どうぞ』
いつも飴を美味しそうに舐めているロキさん
わたくしの特製の飴がお気に入りみたいで
嬉しそうにしているロキさんを見ると・・・また、作りたくなってくるのです
『ロキさんは、お菓子大好きですよね??』
『大好きなのは、トールじゃないのか~??』
質問に質問で返されてしまいました
確かに、わたくしはお菓子大好きですが・・・
食べるよりも作るほうが好きだと思うのです
『私もお菓子大好きですよ、特にトールさんの作るクッキーは最高です・・・』
『オーディンさんもロキさんも、いつもわたくしの作るお菓子を笑顔で食べてくれます・・・本当に嬉しいんです、だからまた、その笑顔を見たくて作るの~♪』
これが平和な世界で、仲良し女学生な感じでしたら
今のどれだけ楽しいことでしょう??
わたくしは、戦いの世界でしか・・・ほぼ生きてきていません
それだからでしょうか、平和な世界を強く望むのは!?
『女神の治める楽園にしてしまえば、トールの思う世界も夢じゃないかもしれないな・・・』
ロキさんはいつも素敵な思想を持っているから
つい、その理想を求めてしまうのです・・・
今回もそんな楽園を夢見て
現実にしてしまおうと、本格的に計画を練って
遂行中なんです
『トールさんのスキルは、宝石を使って死者も蘇生させることが可能なんですよね??』
『はい・・・次元の魔女のスキルには及びませんが、宝石を宿した天使としてですが蘇生は可能ですわ』
オーディンさんが、どうしてこの話をわたくしにしているのかと申しますと
今、この星は世界中で戦争をしている状態なのです
そして、その戦争に我々も介入して
終結させることが、最初の目的だから
その際、かなりの数の犠牲が出てしまうから
犠牲となった方々を可能な限り蘇生しようと考えたのです
女神というのは、色々と便利な能力を保有していまして
死者とのコンタクトも、ある程度は可能なんです
ですから、天使でも問題ないと言われた魂は宝石を使い
生前の姿で蘇生を行うことにしたんです
拒絶される方や、魂とのコンタクトの不可な方には残念ですが諦めてもらうようにはなってしまいますが
それでも、8か90%近くの死者とは対峙できると思われます
これが、幻想世界となった神の特殊な能力だったりします
死なせないことが大前提ではあるので
あくまでも最後の手段のように思っております
それに、既にお亡くなりになられた方とも
コンタクトは可能な場合もありますから
そのあたりを区切りの位置なども考慮しないといけませんし
蘇生できるからと、粗末な扱いとなっても困りますから
だから、あくまでもこの3名だけの秘密としています
『圧倒的武力で戦いを行うから・・・我々への反感は強いぞ、特にオーディンは内気な性格なんだから』
『・・・ううっ、ロキさん(´⌒`。)グスン』
これは、ロキさんの言葉が今は正しいと思われます
オーディンさんには悪いですが、正念場だと思って耐えてもらいましょう
『どうしても、心が耐え切れなくなったら・・・わたくしに打ち明けて下さいね♥』
『あ・・・ずるいぞ、トール!! ロキちゃんだけ悪者扱いじゃないか~!?』
わたくしが優しい言葉をかけたから
ロキさんが、拗ねてしまいましたわ・・・
ふふふ、ごめんなさいロキさん
でもね・・・おかげでオーディンさんの気持ちが固まったようです
『ロキさん、私・・・負けませんから!! 二人と一緒に楽園で微笑みたいです』
『そうか・・・だったら、ロキちゃんも同意見だ・・・な、トールもだろ??』
わたくしは、無言で頷きました
この絆は永遠に紡がれていくでしょう
女神の誓いは、絶対的効力があるのだから
わたくしとロキ、オーディンと三賢者として・・・この世界を楽園にしてみせますわ~!!