初仕事 1
「ついたぞ」
エースに連れられて来たのは、カウンターの横に、たくさんの貼り紙が貼ってあるボードがあるだけの建物。その前では、十数人の人達でにぎわっている。
「……ここは?」
「ここには、色々な場所から、色々な依頼が舞い込んで来るのさ。ちょっとしたアルバイトから、達成困難な仕事まで、なんでもあるぜ」
エースはそう言うと、レオンをボードの前まで案内する。
「これらの依頼をこなせば、報酬が貰えるんだ。何か、自分にできそうなものがあれば、受けてみな」
「『自分にできそうな』ねぇ……。」
レオンは若干面倒くさそうに、ボードの張り紙を見つめる。しばらくそうしていると、ふと、一つの張り紙が、レオンの目に留まった。
『ゴブリン討伐依頼……5000P 』
「5000Pか」
隣にいたエースも、その張り紙をのぞき込む。
「それだけありゃあ、旅の資金としては十分だな。この依頼にするのか?」
「そう、だな……。――うん、そうする」
レオンはそううなずくと、その張り紙に手を伸ばした。
「後は、それをカウンターに渡して手続きすれば、契約完了さ」
「お、おう」
レオンは言われるがままに、カウンターの方へと向かって行った。
「あ、あの、この依頼を」
「この依頼を受ける」
「……え?」
レオンの横から割って入って来たのは、ブルーグレーの髪の少女。――そう、レオンを捕らえていた山賊達を皆殺しにした、あの少女である。
「君……あの時の!」
少女は、レオンをしばらく横目で見つめた後、無視して手続きを済ませる。
(…………ひどくね!?)
少女はカウンターに背を向けると、そのままどこかへと消えていった。その様子を、レオンは面白くなさそうに見ていた。
(何だよ、あの態度……。)
「おい、レオン」
エースに名を呼ばれ、レオンははっと我に返る。
「手続きは済ませなくていいのか?」
「そうだった、悪ィ悪ィ」
レオンは改めてカウンターの前に行き、手続きを始める。
「この依頼を受けたいんだけど…………。」