ロッコリの森にて
二、三日は歩き続けてきただろうか。レオンの足からは、若干の筋肉痛が伝わってきている。それでも、レオンは山賊達に連れられ、歩を進める。
(ここは、確か……『ロッコリの森』か?)
姉に聞いた気がする。都へ行く道とは逆の方向に、『ロッコリの森』という、とても深い森があると。
周りには、レオンの何倍も背の高い木々が立ち並ぶ。風が吹くと、それらが葉を揺らしながら、ザァッ、と音を鳴らす。また、あまりにも背が高いせいか、日の光があまり差さず、森の中は薄暗くなっている。
「恐くなったか?」
ガオウはレオンの方を振り向かずに、問いかける。
「べ、別に……。」
「だろうな、本当に恐いのはこれから――ん?」
突然ガオウが、足を止めた。その様子を見た、レオンや他の山賊達も。ガオウ一行の前に、一人の少女が現れたのだ。
灰色のマントと、やや癖のあるブルーグレーのショートヘアが、そよ風に揺れている。氷のように冷たい感じを漂わせる水色の瞳が、ガオウ達をじっと見つめていた。
「何だ、テメェは?」
ガオウの問いかけに、少女は答えない。代わりに、腰につけていた刀を取り外し、左手でそれを引き抜く。右手に鞘を、左手に刀を構えた状態だ。
「ホゥ、この俺とやろうってのか」
ガオウは背中の両手斧を取りだし、構える。他の山賊達も、それぞれ自分の獲物を手にした。