アルヴァンス→葛ノ葉:覚醒~人を化かす妖
「夢から覚醒した」私は、この世界の惨状を目の当たりにした。
土地は荒れ、私が知っていた家も、城も、山も、川も。 何もかもが無くなり、新しくなっていた……。
それに、私の大事な妹、フェリスの姿も無くなっていた。
とにかくこの状況を整理するため、私はアテもなくフラフラと歩き続けていた。 そんな時、私を呼び止める声があった。
「ちょい待ち、君はこんな所で何をしてるのかな。」
振り返れば、黄金の毛並みに9本の尻尾。 そして特徴的な耳を携えた女性が立っていた。
「ボクは葛ノ葉。 見ての通りの妖狐だ。 質問には答えてくれないかな……?」
「答えるも何も、私は今此処に来たのよ。 寧ろ質問をしたいのは私。」
「今此処に来た……? いや、よく見たら君は人間じゃないね。夢魔かな?」
名乗っても居ないのに名乗ったり、質問に質問に返してきたり……。 よくわからないが、敵では無さそうだ。
「えぇ、私は夢魔よ。 2000年近い夢から今醒めたの。」
「へぇ、2000年かぁ。大変だねぇ。 ボクと同い年だね。」
微笑みながら話し掛けているが、2000歳とは思えない見かけである。 狐は人を化かすと言うからこの時は流していたが、まさか本当に化かされているとは思わなかった。
それに気が付いたのは、この不思議な出会いからまた数十年後の事であった……。