過去
私が話し掛けた先輩は予想通り2年生だったらしく、後から来た数人の先輩に対して腰を低くして挨拶していた。
それから私と隣にいた鈴木さんに、丁寧に部員紹介してくれた。
3年生は10人くらいいるのに、2年生はたった1人だ。
スパイクが床に擦れて、軽やかな音を鳴らしている。スパイクのこの音が好き。
その音が少なくなってしまうのは悲しい。
これから部員集め頑張ろうと、私は静かに拳を作り意思を固めた。
「相坂さん」
「ん、なに?」
私は隣を振り向かず、練習風景を眺めながら返事をした。
「相坂さんってもしかして、入学式の日に斉藤 夏に声掛けていた子のお友達?」
「え、見てたの?」
動揺はしたものの、それでも私は振り返らなかった。こんな所で私語に集中するのは失礼だ。
私の反応が面白かったのか、鈴木さんはスクスクと小さく笑う
「とても目立っていたもの。気が付かない人なんていないと思うわ」
「そ、そうか」
そりゃそうか。
小春め、君のお陰で有名人だぞ
「でも、斉藤 夏には関わらない方が良い。私中学が一緒だったのだけれど、彼、酷いわよ。
同級生の男子と暴力沙汰になって、警察のお世話にもなっている」
「え……?」
私はつい、隣を振り向いてしまった。