表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/25

泣いていたから


このまま家に帰るのは悔しかった。なんか、私をこんな状態にした、運命の神様に負けたような気分になるから。



カバンからスマートフォンを取り出して、電話をする。メールやラインでも良いかもだけど、やっぱりすぐ連絡取りたい時は電話だよね。



相手は3コール目ですぐに出てくれた。


『小春? どうしたの?』


友江は少し眠そう。アクビをしながらゆっくり話していた。


「ちょっと色々あって……今からそっち行っても大丈夫?」



友江はふたつ返事でOKしてくれた。良かった。友江はあまりダメって言わないから嬉しい。



財布の中にはまだ3,000円入っていた。まだ余裕がある。

これでお菓子や飲み物を買って、友江の家に行くことにした。


お腹空いていたからチョコパンも買った。




「なんで、制服なの?」


Tシャツにショーパンという、ラフな格好で出迎えてくれた友江は、予想通りに目を丸くして私に聞いてきた。



「……間違えて、その。学校に行くところ……でした」



友江から目線を外して、ばつが悪そうに小さく私が言うと、友江は近所迷惑にもなりそうな位大きな声で笑った。



「もー。笑わないでよ」



「ごめんごめん。でも流石小春、ドジだよね〜」



ケタケタと愉快そうに笑いながら、友江は家に入れてくれた。



「先生だってちゃんと言ってたじゃん」


友江は私の買ったポッキーを口に加えて、ニヤニヤと私を見る。



「うっ……。全然聞いてなかった。だって斎藤さんの事考えてたし」



「斎藤 夏、か。たぶん先輩だよね。斎藤先輩? 私には目付き悪くて怖いとか思えなかった」



目付き。

確かに、優しい表情ではない。友江の言う通り、少し怖い。



でもそれ以上に、私にはあの瞳の奥で泣いている様に見えた。




「商店街に、斎藤……先輩とあったの」



「嘘!? そんな偶然あり?! ね、私服カッコ良かった?」


前のめりになって、テンション高めに聞いて来た友江のその質問を、私は無視して話しを続けた。



「関わらない方が良いって言われた……『俺には関わるな』って」



前のめりになっていた友江が、今度は後ろに下がり、ベッドにもたれ掛かった。少しだけの珍問して、友江はポツリと呟いた。



「なんか、中二病みたいな発言だね」



「高校生なのに?! そして恐らく先輩なのに?!」



私は思わず叫んだ。弾みでチョコパンを落としそうになったけど、それはなんとか食い止めた。


お陰で重たい空気が、一瞬で何処かへ行った。



「でも、そんな事言われても、諦める感は無いね小春は」



「うん。諦めないよ。だって、本当に関わってほしくないなら、商店街で話し掛けたりしないよ」




これは確信だった。急に名前を聞いてきた変な女なのに、斎藤先輩は話し掛けてくれた。

あの言葉は本心じゃないよ。




気になるの

どうしてそんなに、悲しそうにしているのかを知りたい。



あの硝子の瞳は、明らかに寂しいと泣いていたから


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ