ボランティア部
「王手」
「なんと……! 兄ちゃん年寄り相手に容赦ないなぁ……」
真っ白な髪をグシャグシャとかき、おじいちゃんは目の前の将棋盤とにらめっこする。
「……すいません」
手加減が苦手なのようで、斎藤先輩は申し訳なさそうにおじいちゃんを見つめた。
するとおじいちゃんは目を細め笑いながら
「謝るな謝るな。こういうのは遠慮されると返って腹が立つものだよ」
と、言う。
ボランティア部として、老人ホームの入居者と一緒に将棋やトランプをして遊ぶ。
顧問になってくれた斎藤先生が老人ホームの施設長と電話して、手配してくれたらしい。
これから月1回、第3月曜日にボランティア部としてこの老人ホームに来て遊ぶことになるんだと聞いた。
「お姉さん、おねーさーん」
「あぁ、はい!」
細身のおばあさんに呼ばれて私は視線をトランプへ戻す。今、ババ抜きしてるんだった。
「彼氏がきになるかい? 小春ちゃん」
「え、もう名前覚えてくれたんですね……って、彼氏じゃないです!!」
顔が熱い。細身のおばあさんと、同じく一緒にババ抜きをしていた入居者さんに、近くにいた介護職員が、私の様子を見てくすくす笑った。
恥ずかしい……
「もー、からかうのは止めて下さいよぉ」
私はもう、照れ笑いをするしかなかった。
ボランティア部を立ち上げて、数日が経った。今はもう6月に入ったところだ。
ボランティア部の活動は火曜日と金曜日の週2回、用務員さんの手伝い(主に庭の手入れ)をしている。
それ以外にも募金活動の手伝いとか、託児所で本の読み聞かせなんかも最近はする様になった。
全部斎藤先生が手配してくれているのだから、先生には頭が上がらない。
「……疲れた」
夕方5時。老人ホームからでて、すぐの所で斎藤先輩は小さな声で吐き捨てた。わざわざ私の横に来てから言ったのだから、1人言ではないだろう。
「夏先輩、やっぱり知らない人と話すのまだ慣れませんか?」
「慣れないな、元々過度の人見知りだから」
綺麗な瞳が私を見つめる。ただその瞳は心底疲れているみたいだった。
「お疲れさまです、先輩」
笑顔でそう言うと、夏先輩も小さく微笑んでそれに答えてくれた。
たまにだけど、先輩は笑うようになった。初めて夏先輩を見たときの、あの悲しい瞳は今は無い。
「なんだ小春。そんなに見るな」
「え、あぁっ! すいません!!」
真っ赤になった顔で睨まれてしまった。私は慌てて視線を反らす。
私の頬も、なんだか熱い……。
私は先輩を"夏"と呼び、先輩は私を"小春"と呼ぶようになった。




