決行
「俺の髪と目の色、変だろ」
最初の一言はそんな言葉だった。そんな事は無い、私は先輩のその色が大好きだ。
だから懸命に首を横に振ったけれど、斎藤先輩は少し目線を反らすだけで私の態度には答えてくれなかった。
「両親共に日本人だから、余計に昔から目立つんだよこの色。母方の祖先にフランス人がいるからそれのせいだろうとは聞いたけど……」
そう言うと、先輩は缶コーヒーを開けて一口だけ飲んだ。軽いため息を付いて、話しは続けられた。
私はその話しをただ黙って聞くばかりだ
「そのせいで昔から不良と勘違いされて、周囲から嫌な目で見られていたんだ。度々喧嘩を売られる事もあったが、それも無視してきたんだ……でも、その日は逃げ切れなかった」
視線を落としたまま淡々と語る先輩に私は相づちを打つ。そろそろ聞きたかった内容に入るから、体が自然と前に向いた。
「『金髪で、変な目で、調子に乗っている』なんて言われながら、学校の裏庭で腹を何度も殴られてな。とっさに『このままじゃあ死ぬ』と思ったんだ。
そしたら、気がついたら目の前でさっきまで俺を殴り続けていたやつが倒れていた」
真実は、本当の重症まで追い込まれていたのは斎藤 夏本人だった事が、その会話から伺えた。
「俺を殴ったやつは成績優秀で、学校内だけでは優等生だったんだ。だから俺が悪い方向に噂が流れた……」
もう収集不可能だと言いたげな態度だ。
私から一度も目を会わせない瞳の奥に、諦めの色を見た気がした。
けれど私はそんな彼に
斎藤 夏先輩に
どうしても伝えたい事がある。
何も言わずにただ押し黙って私のリアクションを待っている先輩を見つめながら、私は前のめりになっていた姿勢を正す。
そしてこれから話す言葉を正確に伝える為に、私は深く深呼吸をした。
「斎藤 夏先輩」
「なんだ」
名前を呼ばれ、それに反応し先輩は顔を見上げ私を見た。
「なんで、違うなら違うって言わないんですか。ダメじゃないですが」
「え」
予想していた反応と異なっていたらしく、先輩の瞳が少しだけ見開かれた。
私は構わす話しを続ける。
「仮に、その話しを帳消しにするのは無理だというのなら、普段の態度を改めるべきなのです」
発する声が自然と大きくなる。言葉にした事によって気持ちが更に高ぶり、言った後私はついに立ち上がり斎藤先輩を見下ろしていた。
「先輩もっと表情豊かにいきましょうよ! 私は先輩の笑顔、是非ともみたいです!!」
最後は自分の願望が漏れてしまったけど、それでも構わない。言いたい事は言ったから、後は先輩の反応を待つばかりだ。
……しかし斎藤先輩は何も言わず、ただ私を見上げ固まったまま反応ひとつ見せない。
その変わりに別の"斎藤"が私達を見て高らかに笑い始めた。
「あははははっ! それ良い! 私も同感!! なんなら斎藤 夏改造大作戦をしようよ」
今だ動きを見せない斎藤 夏を余所に、その一言で動きだす。
斎藤 夏改造大作戦は、毎日昼休みに保健室にて行われる事となった。




