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渡り歩く噂話

友江の腕を強引に引き、私は教室を出た。



「ちょっと小春?! 教室どこなのか分かってるの?」


「分かってるよ? 昨日だって途中から一緒に登校したんだもん」



斉藤先輩のクラスは3階の2-D

下駄箱の位置で把握したからしっかり覚えている。



迷うこと無く教室まで来ることが出来た。



先輩は目立つから、戸に付いている窓を少し覗いただけでどこにいるかが把握出来る。


斉藤先輩は一番後ろの席の窓際に座り、退屈そうに空を眺めていた。



「いくよ」


私は友江の方を見て、決意表明をするように言った。けれど友江は少し嫌そうな顔をしていから、私はそっと手を離した。



教室には1人で入る




戸が開く音に反応して、教室にいた先輩達の目線は私に向けられた。


誰に用があるのか先輩達は把握しているみたいで、だから誰も私に話し掛けてこない。




「斉藤先輩、少し聞きたいことがあるんです。今、大丈夫ですか?」



硝子の様なその瞳は私の顔を少し見て、何も言わずに立ち上がり教室を出た。



「あ、待ってくださいっ」



私もすぐにその後を追う。



斉藤先輩は教室を出て立ち止まる。

少し離れた所で友江が心配そうに私を見ていた。




「教室にまで来るな」


「そんな事より聞きたいことがあるんです」


「……早く言え」



斉藤先輩は不機嫌そうに腕をくみ、壁にもたれかかった。



「先輩、中学の時の噂話。どうしてそのままにしちゃうんですか? 暴力なんてしてないならしてないってハッキリ言うべきです」



噂を聞いて感じたことを率直に先輩に話すと、先輩は腕を組むのを止めて、目を丸くして私を見ていた。



因みに友江も似たような顔をしていた。



「なんで噂が真実じゃ無いことが前提なんだ」



「だっておかしいじゃないですか。噂だと頭から血が出る程の力で何度も殴ったって言ってますけど、先輩腕細いじゃないですか。


そんな力があるようには見えませんよ?」




斉藤先輩は背は高いけど、体つきは一般的な男性の体型よりも細い様に見えた。


相手が相当な軟弱者でも無い限り、すぐに返り討ちにされてしまいそうな気がした。



「お前って結構失礼だな」



そう言った先輩の表情は、さっきよりも少しだけ明るくなっているように見えた。




「じゃあ、どうしてそんな風に噂が渡り歩いてしまったのか教えてくださいよ。そこにいる私の親友と一緒に聞きますから」



私は少し離れた所でポカンとしている友江の事を指差し訴えた。



「朝のHR始まるだろ。昼にまた来い」



それだけ言って斉藤先輩は教室に戻っていった。


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