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真実

鼻メガネは鞄の奥に片付けた。

斉藤先輩に突き放された。冷たい目に、脅すような低い声。

でも、今にも泣きそうな目、助けを求める様な震える声だった。



本当は、苦しいから助けてほしいんだ、きっと。




ローファーを下駄箱に入れて、上靴を取り出してそれを履く。

たったそれだけの作業の間にも、後ろから耳障りな声が私を刺激した。



『あの子あの斉藤 夏と一緒にいる子だよね〜』


『えーなんで? もしかして知らないの?』


『かわいそー』



つまらない人。もっと別に自分に関係のある面白い話し持っていないのかな。



それこそ

”かわいそー"



早く友江に会うために、少し早足気味に廊下を歩く。階段を一気に掛け上がり、教室の戸を開ける。



「友江おはよ〜」


「おはよう」


一番前の席に座る友江の表情に、笑顔は無かった。

その真剣な眼差しは突き刺さる様な気がして怖い。



「小春、ちょっと斉藤 夏について話があるの」


「う……うん。待って、今鞄置くから」



友江が頷くのを確認して、私は自分の席に鞄を置いた


体の重みを感じつつ、ゆっくりと友江の席へと足を運ぶ。



「話ってなに?」


隣の席の椅子を拝借して座り、友江の話しに耳を傾ける。



「バスケ部で知り合った人に聞いた話しなんだけどね、斉藤先輩かなり危ない人かもしれない」



「危ない人?」



確かに見た目は怖いけど、真面目そうな気もするけどな。



「……あのね」



友江は私から少し目線を外す。目線は外されたまま、話しは続けられた。



「同級生の男子を理由もなく殴ってしまったんだってて、中学の時。なんども殴って、頭から血が出る程だったって……


あの人何するか分からないよ。小春の事だって……もしかしたら」



友江の体は微かに震えていた。友江は普段、実際に見ていない噂話を信じるタイプではない。



それでも、こんなにその噂話を信じるのは、私の事が心配だからだ。



「うん、わかった」



私は友江の肩に手を優しく添えた。



「真実は当事者にしか分からないよ。どこまでが本当か、斉藤先輩本人に聞いてみよう」


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