夢の場所に 〜prologue〜
〜プロローグ〜
音が聞こえる。
眠っている体に命令する。
うるさい音を止めろ
ピピピッ、音が止まる、目を開ける、体を起こす、辺りを見る、部屋をでる、辺りを見る、階段を降りる、顔を洗う、朝食を作る、机に並べる、彼女を起こしにいく、階段を登る。
「ピノ、ご飯だよ」
返事はない、あるはずがない。
「ああ、久し振りにやったなこれ」
約十年ぶりだ、いや彼女がいなくなってすぐはこういうこともだびたびあったが、近頃はなくなっていた。
彼女の事を思い出す。
数十年前、僕は吸血鬼と出会った、そして魔導師と出会った、父とも出会った、全て僕の心に刻まれている。
なにもかも懐かしい、ああ、いいことを思い付いた、かなり急だが日本に帰ろう。
彼女と過ごした家に。
皆と過ごした街に。
今週は仕事でいけないが。
あの人に頼めば来週には日本にいるだろう。
そうだ先輩も誘ってみよう、きっと喜ぶはずだ。
ああ、これでめんどくさかった仕事にも精が入る。
よし、すぐに仕事にいこう、すぐに終わらせて日本に帰ろう。
ああ、顔のにやにやが抑えられない。
こんなにワクワクするのはずいぶんと久し振りだ。
そして僕は時代を遡る。