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勇者がやってきたようです

あるーひー。

もりのなかー。




勇者さんに出会ったー。



「あ」

「あ」




日本人ってどうして見た瞬間にわかるんだろうと思いました、聖名明です。







「へー、じゃ迷い人なんですかー」

「君は勇者とか大変だねー」


始まりの森から移動して王都の近く。

カフェに誘ったが、森からはちょっと出れないんで…というので、近くの洞窟まで移動してお茶にする事にした。

ん? お茶受け?

散歩してただけだし当然持っていた。ちなみに今日のクッキーは中々の出来です。


「あ、なんか懐かしい味…」


そうだろうそうだろう。たくさん食べたまえ。

なんでも勇者君は隣の国で召喚されたらしく、たまたまレベル上げ出こちらの森に入ったら俺と出会ったとのことだった。

…ホントか?

何かの引力かみさまだったりしないか?


ぽぽーん。

『クエスト:勇者と仲良くなろう

 内容:酷い、信用なさすぎる!』



ク エ ス ト 名 か ら し て 信 用 で き ん わ !!!



「まあ、迷い人って言っても何が出来るわけでもないしね」

「え? 迷い人ってぶっちゃけ神様が能力付与するんで馬鹿みたいに強いって話でしたけど」


おおおおおおおい。

迷い人俺だけじゃねーのかよ!

どんだけ迷わせてんだよ!

そして勇者君、何気に君礼儀正しいな! 見た目若いのにな!


「迷い人ってそんなにいんの…?」

「あ、いえ。今はアキラさんだけっぽ…あ!」

「?」

「…うう、すみません…調べてたのばれました…」


…………………。

語るに落ちるの早!?

しかも俺気づいてなかったのに自己申告とか何してんのこの子!?


なんだろうこの勇者。

余裕で嘘つけない処と言い、騙されるようにしか見えないぐらいイイ子なんだが…。

何これ何の罠?


ぽぽん。

『内容:そこで疑うのが君だよね…』


うっせぇ!

いきなり迷いこまされた上なんか変な能力ばっかりくっついて大変な目になった俺としちゃ、まず疑いたくもなるわ!


「うう…頼み事する前に仲良くなる作戦失敗…」

「むしろ色々だだもれてる時点で失敗なんじゃねーかな…」


ゴン、と机代わりの岩に頭をぶつける君に言いたい。

君人騙すの向いてないから諦めた方がいいよ…。


あ、待てよ。

実は騙すために油断させてる説があるな…?

まあ何にせよ、同郷のよしみだ。

話しくらいは聞いてやるか。


「頼み事ってなんだよ?」

「あ、えっと。ちょっと国を滅ぼすの手伝って欲しいんですけど」



……………?

今なんつった?



「は? え? なんだって?」

「だから国を」

「いやいやいやいやいやいやまてまてまて! 何サックリ軽くそんな事頼んでんの!?」


よりによって大暴投もいいところだよ!

イイ子とか言ってるレベルじゃねーよ!

なんだ? 異世界なんてゲームだ的な感じで何かをこじらせてる残念な子なのか!?


「だって―…」


口を尖らせてもかわいくありません。

つーか、君めっちゃ普通の日本人だから! 顔平凡だから!

俺も平凡だけどそこは気にしない!


「召喚された時になんか、奴隷契約っぽいのが入ってて、このままだと世界征服とかさせられちゃいそうなんですよう…」

「…それで?」

「同じ滅ぼすなら、元凶の国だけ滅ぼせばお互いイイかな☆って!」

「つーか、奴隷って事はその国滅ぼすの俺だけだよね? 君手を出せないよね?」

「あ、わかります?」


わ か ら い で か !?

つーかなに気軽に言ってんの!?

何なのヘビーすぎんだけど!


「そもそも奴隷契約ってなんだよ?」

「あ、えーと呪いの一種らしいですね。王様の言う事を聞かないと、苦しむみたいな?」

「苦しむって具体的には」

「実はちょっと遠出してるだけの今でも、頭痛通り越してガンガン☆です!」


爽やかに危険発言来たー!?

そのうち目の前に迎えとか来たりするんじゃないの?

え? 巻き込まれるの確定じゃないのそれ!?


「…ちなみに迎えが来たりなんだりは」

「そろそろ来るかもでーす」

「!!!」


逃げよう。

そうしよう。


ガタ、と立ち上がると同時に掴まれる腕。

怪我をしないようにか空洞を作って捉えられてるがビクともしない。

さすが勇者! 腕力は結構あるんだねっていうか手ぇでかいね!


じゃねーよ!

はーーーーなーーーーせーーーー!!!


「助けてくれないならせめて一蓮托生に!」

「それ助けて欲しい人の態度じゃないよね!? 」


仕草がかわいくても言ってることがかわいくねーんだよばかあああ!

タイムリミットは後何分だ!?

何すればいいんだ!?


「つか、その契約ってどうしたら外れる?」

「あ、えっとですね。国との契約なので王族が全部滅ぶか、術者が死ぬか、僕が死ぬか、呪具が壊れるかです」


どれも人死にじゃねーか!!!

あ、待てよ。

呪具?


「呪具ってどうすりゃ壊れんだ?」

「一応道具ですし、力込めれば壊れるかも?」

「つか呪いなの? これ」

「呪いらしいですね。普通の魔術だと、勇者の魔力が強すぎて聞かないので呪いをかけるんだそうです。そもそも呪いかけたら力半減するわけで、そこまでして隷属させる意味ってなんだよ? って話なんですけどね」


すらすら出てきすぎているので言葉には嘘はないようだ。

つか、呪いならなんとかなるんじゃね?

うちには超・支援特化の神様の鳥がいるわけで。


「スノー」

「くるぅ?」

「これ、なんとかなんね?」


勇者の腕についている禍々しい気配の放つ物体をさす。

最初見た時趣味悪いファッションだなー、とか思った俺の危機感のなさをなぐりたい。

でもほら、同郷ってつい気を許したくなるじゃん?


「くーるっぅー♪」


にわかに光を放つ鳥。

ん?

何する気だ?



と思った瞬間。

スノーががぶりと勇者の腕を食いちぎ……………。




ぎゃぁあああ!?!?!?!




「…っ!?」

「ちょ、おま、なにしてーーー!!?!」



その一瞬後、光がその腕があった辺りを包み、即再生した。

え。

つか、そんなアバウトな外し方ってありなの!?

腕輪に力当てるとかそういうのないの!?!?!



スノーは何故かドヤ顔ちっくに胸を張ると、ペッと腕を吐きだして投げ捨てる。

……………。

いや、呑み込んでないのはいいんだけどね。

それ、渡されてもいらないから。


腕にハマったままの腕輪は、機能を止めたのか色を変えていた。

思わず首を傾げると、勇者君はそれを拾う。


「死亡扱いになったみたいですね」

「おうふ」

「自傷も出来ない仕様だったので、気づきませんでした。こういう解き方もできるんですね…次呪われた時はまずそう頼む事にします」


いやまて。

そもそも隷属される機会とか1回でいいから!

後腕再生とか、多分スノーレベルじゃないと無理すぎるから!


「えっとー…とりあえず目的完遂ってことでおけ?」

「はい、ありがとうございます」


にこ、と笑う顔がどうして黒く見えるんだろう。

何故か襲われる寒気を見ないふりしつつ、俺はじゃあ帰りますねー、という彼に手を振った。


…なんで隷属外れたのに帰るのかとか野暮な事は俺は聞かない!

聞かないったら聞かない!

称号の臆病者は伊達じゃないんだからな!!!





その後、どこぞの隣国が滅びたとか、そう言う事は俺は聞いていない。

あの勇者君、もう来ないよね……??



ぽぽーん。


『クエスト:勇者と仲良くなろうをクリアしました

 報酬:勇者との友情獲得・スノーの呪い耐性が向上しました』



…………友情いらないからもう来ないで!!!!

仲間フラグと思った人は残念!

ところで残酷描写ありは必要なのか、それが問題だ。多分セーフ?

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