虹の終わりで
手の届かないものがあります。
どれほど恋い焦がれても近づくことを許されず。
気高き人。
精一杯笑って見せました。
私は恐れていたのです。
世界から弾きだされることを。
あなたが私のすべてなのですから。
「失礼ですが、こちら――さんのお宅ですよね」
「えぇ……そうですけど、なにか」
手の届かないものがあります。
欲しくても手に入らないものがあるのです。
愛しい人。
一度も私を見てはくれませんでしたね。
それでもよいのです。
あなたは前向いていれば。
それは叶わぬ夢なのですから。
しかし私を置いていってしまうのですね。
追いかけることすら許してはくれないと。
明日からどう生きていけばいいのです。
ねぇ、お母様。
私はただ――あなたになりたかったのです。
「通報があったものですから」
「さぁ……私は何も」
手の届かないものがあります。
どれほど恋い焦がれても近づくことを許されず。
愚かな人。
嘘で塗り固められた清純に惑わされ。
私は笑って見せました。
命をかけてもいいのです。
あなたが私のすべてなのですから。
「お帰り下さい。ここには何もありませんから」
「……また改めて伺いましょう」
手の届かないものがあります。
欲しくても手に入らないものがあるのです。
悲しい人。
闇など知らずに輝いて。
それでもよいのです。
あなたは夢を見ていれば。
それは真実となるでしょう。
しかし私はなにも感じないのです。
あなたを想うこと以外。
いっそ消えてしまえば楽なのでしょうね。
ねぇ、お母様。
約束です。
虹の終わりで、会いましょう。
――今度は私を愛してくれますよね?
【終】
at the end of the rainbow.
[訳]望んでも手に入らないもの
お読みいただきありがとうございました!愛がちょっと歪んでしまいました。昔は随分暗いものを書いていたようで…。