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第6話 嵐の前は静かじゃない

「薄汚い獣どもが。うちの家畜の方がよっぽど話が通じるよ」


 苛立たしげに振り返ったコヴィ様と、家の中から覗き込んでいた私の目が合った。彼女は無言で、くいっと顎をしゃくって手招きする。


「あんたにお客さんが来たみたいだね。幸か不幸かは知らないが」


 促されるまま外に出た私。彼らを見上げて目を丸く見開く。


「!!」


 そりゃ驚くわよ。重厚な鎧には、私が見慣れていた王家の紋章。テレサ様の服と全く同じ印が、誇らしげに輝いてるんだから。


「帝王からの書簡だ」


 鋭い視線とともに、兵士の一人が黒い封筒を放り投げる。私は慌ててそれを両手で受け止める。


「帝王って……父様は死んだはずじゃ?」

「知らん。そんな痴れ言」


 冷たく吐き捨てられると同時に、私は抗議の視線をコヴィ様に向けた。が、この女……明後日の方向を向いている。


「とにかく渡したからな。遅れずに来い」


 ともかく、父親は生きていたのだ。今の今まで、どこで何をしていたんだろう。嵐のように男たちが去った後、農地には静寂が戻った。けれど、もう以前とは違う。得体の知れない空気が漂っているのを感じる。


「コヴィ様ぁ……冗談にも程があるんじゃないですか?」


 言っていい嘘と悪い嘘があるだろう。私は怒りに任せて手近にあった鍬を握りしめ、ジリジリと彼女に詰め寄った。


「ふー……」


 けれど、コヴィ様は全く応戦する気がない様子。長く息を吐き出し、空を虚ろに見上げる。


「座りな。ちょっと、長い話になる」

「私、タバコの匂い嫌いなんですけど」

「いいから」


 彼女の視線が、部屋の隅にある小さな祭壇へ向けられた。そこには男の人と、かつての私と同じくらいの歳格好をした、幼い少女の似顔絵が飾られている。この遺影について、私は今まで一度も教えてもらえたことがないのよね。


「私には娘がいた。好きでもない農夫との間にできた、鼻の大きいバカな子供だった」


 予想通りの答えだ。今まで愛おしそうに向ける視線は、他人に対するものではなかったから。

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