第4話 頭お花畑
それは拾われた翌日のこと。
「ふんっ!」
鈍い音とともに、鶏の首が胴体から切り離され、宙を舞う血飛沫が弧を描く。その瞬間、私の脳裏に浮かんだのは、テレサ様の青白い顔だった。それから私は、一切の動物を口にできなくなった。
「……肉なんか食べなくたって、生きていけるじゃないですか」
絞り出すようにこぼした私に、コヴィ様は冷たく鼻を鳴らす。
「作物が不作の時はどうするんだい? 家畜や魚をいただくだろ。何度も言わせるんじゃないよ」
「そんなこと今までなかったじゃないですか」
「たまたまだって教えただろ。これだから頭お花畑は困るね」
過酷な現実を生き抜いてきたコヴィ様の言葉には、有無を言わさぬ重みがある。それでも、私は俯いたまま呟かずにはいられなかった。
「……殺された母のことを思い出すんです。人伝に処刑されたって聞きました」
ピタリ、とコヴィ様の手が止まった。
「それ、ずっと黙ってたのかい?」
「言葉にするのが怖くて」
「バカだねぇ、そういうことは早く言えってんだい」
まとわりつくような気まずい空気を散らすためか、コヴィ様はわざとらしく大きなため息をついた。
「父親はどこで何やってるんだい?」
「……分かりません。ずっと行方不明らしいです」
「名前すら覚えてないのかい?」
「えーっと、トラ……ハムかな」
「まさか、トラヒムかい?」
「あ、そうです! ご存知なんですか?」
コヴィ様の表情が凍りついた。今まで見たこともないような顔。まるで目の前で、地獄の門が開いたかのよう。
「忘れな、あいつは死んだ」




