第2話 ハッピーバースデイ・トゥーミー
破滅は唐突に。私が六歳を迎える誕生日の夜に、革命が起こった。
「王妃を捕らえろ!」
怒り狂う民が城門を突き破り、王宮へとなだれ込む。怒号、悲鳴、血と油の匂い。
「悪魔の親子を処刑するぞ!」
私たちの楽園は、一夜にして地獄へ変わった。窓の外には紅蓮の炎が広がり続ける。
「逃げなさい、アイサ!」
母は、私を隠し通路へと押しやった。全身が震えていたけど、力強かった。セロリみたいに細い腕のどこに、こんな腕力が隠れていたのかって驚いたわ。
「お母様を置いて逃げられない!」
「いいえ、生きなさい。そうでなければ――」
テレサ様の手が、私の頬に触れる。今目の前にいるのは、ただの一人の女性だ。息が、時間が止まる。
「私が孤独に耐えた意味がないじゃない」
その後新しい母は革命により、断頭台のシミとなったらしい。私は彼女の最期の言葉の意味について、大して考えを巡らす暇もなく逃げた。
「こっちに逃げたはずだ!」
「一生過酷な労働をさせてやる!」
暗い森の中を、裸足で走った。ドレスは破れ、泥まみれ。栄華を極めた悪徳令嬢から一転、ただの怯える子供。足からは血が流れる。私の血液は赤色なんだぞって心の中で叫んだ。
「はあ、はあ、はあ……助けて!」
逃げて逃げて、辿り着いたのは広大な農場。ポツンと建つ一軒家を見つけ、その中へ逃げ込む。そして私は、ぷつりと糸が切れたように、冷たい土間へと倒れ込んだ。




