第19話 大バカ娘
「今度こそ、幸せになれるって信じてたのに……」
結局、どこまでいっても過酷な現実に直面する。神様は、死こそが最大の祝福とでもいいたいのかな。再び生まれてきたこと自体が間違いだったのかもしれない。抗いようのない絶望が、私の両足を深く引きずり込んでいく。
「残念だが、夢はここで終わりだ。これから先、お前は誰かのご機嫌を這いつくばってとるだけ。惨めな慰み者として生きていくんだよ」
「うっ……うぅ……」
再び涙が溢れ出す。体内にある水分、全て瞳から流れ落ちていく気がした。このまま、枯れ果てちゃうのかな。
「また誰かのいいように使われて、汚れて死んでいくのかい?」
不意に、脳裏へ声が響いた。コヴィ様の声だ。
「そうなるとは思ってたけどね。あんたはどっちかというと、奪われる側。私と同じ、哀れな子犬さ」
同じ子犬? ……あっハイ、そうです。私はいつだって無力だ。
「いっそ全部諦めて死んだ方が、楽になれるかもしれない」
でしょうね。痛いのも苦しいのも、もうこりごりだ。
「だが……あえて言わせてもらおう」
記憶の中のコヴィ様は、いつもみたいにそっぽを向いていた。顔なんか見なくたって分かる。耳まで真っ赤にして、照れ隠しに頭をガシガシと掻きむしりながら、やいのやいのと私を叱りつけるんだ。
「とっとと目を覚まして働きな!」
「っ!?」
「この……大バカ娘が!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
泥まみれの喉から、叫び声が噴火する。それは私が新しく生まれてから、いや、私という意志がこの世界に発生してから初めて上げる、魂の底からの雄叫びだった。
「私の帰りを! 待ってくれている人が! いるのよ!」
まだ、死んでたまるものか。両手を強く握りしめると、眩い緑色の光が集束し、形を成していった。私の生きようとする意志に呼応し、ついに目覚めの時が来た。




