第17話 おままごとの専門家
「その冷気をさっさと止めねえと、感染が早まるぜ! 俺の相棒は、冷えて乾燥した空気が大好物だからな!」
感染ってことは……男が持つ魔剣の本当の力は不可視のウイルスなんだ。
「くっ……ぁ……」
ジュレンの喉から掠れたうめき声が漏れる。急速に侵食する病魔に意識を刈り取られ、彼は力なく膝をついた。手から銀の剣が滑り落ちる。
「刃先が微かに掠っただけで勝負ありだ。あとは勝手に腐敗して、惨めにくたばっていく。呆気ねえもんだな」
「ジュレン!!」
倒れ伏した彼のもとへ駆け寄ろうとした私の前に、男が大きな壁のように立ち塞がった。
「まあ、大人の俺に比べりゃ……お前らなんざ、寝小便が止まらないクソガキ。最初から勝負にすらなってねえ」
男はゆっくりと私に歩み寄り、死神のような視線で私たちを見下ろした。
「体に大きな傷の一つもねえ。眼光も鋭くねえ。おままごとの専門家なんだろ?」
「あんたは……違うとでも言うの?」
「当たり前だろうが! 俺はあらゆる理不尽を喰らい尽くして、底辺から這い上がってきたんだよ!」
突然に、男の背後の陰惨な情景が透けて見えた。今、そこに立っていることすら奇跡に思えるほどの、圧倒的な死の色と匂いを感じる。
「世界は子供に優しくなんかできてねえんだよ。鴉にでも食われてな」
「……いい加減にしなさいよ!」
足元に転がっていた太い木の枝を拾い上げ、無我夢中で男へと殴りかかる。でも渾身の一撃は、マメだらけの分厚い掌に難なく受け止められてしまう。
「次はてめえの番だ、メスガキが」




