第14話 罪な男
「おまけに希望者には、自分が占領した城や召使を与えた。誰彼構わずね」
「構わずって……血筋とか、見た目とかは関係ないの?」
「一切ない。来るもの拒まずだ」
「そんな異常なことをして、反感を買わないの?」
「それが許されるほど、圧倒的な力を持っているんだ。奴は」
どうかしてる。歴史上、そんな暴君は見たことも聞いたこともない。似たようなことを考える人はいたのかもしれないけど、あけっぴろげにやりすぎでしょ。
「それに、女性側も自分の意思で応じているからね。ほぼ金や権力目当ての身売りだが」
合点がいった。私を育てたテレサ様が、なぜあれほどの権力を振るい、あの城を支配していたのか。すべては自らを王に差し出した結果だったんだ。
「……あなたの母親も、そうだったの?」
私が少しびくびくしながら尋ねる。彼はギリッと、血が滲むほど強く唇を噛み締めた。
「私の母は、飢えに苦しむ街を救うために身売りをしたんだ。だが、王の暴政のせいでますます土地は痩せこけ……結局、みんな死んだ」
「そんなことって……話は聞いてくれなかったの? 我が子でしょ?」
「妾同然の女が産んだ使い捨ての駒に、興味などあるはずがないさ。母は、ずっと奴が来るのを待っていたが……」
確かにそう。私も実の子なのに、今の今まで、まるで存在しないかのように扱われてきたもの。
「許せない……!」
彼の母親……そして私の母テレサ様のことも含め、人をなんだと思ってるんだ、あのゴリラ王は。いろいろありすぎて何も聞けなかったけど、絶対に謝らせてやらないと。
「生き抜きましょう。必ずあの男に報いを受けさせないと」
私が彼を真っ直ぐに見据えて言い切ると、彼は少しだけ驚いたように目を細め、やがてふっと表情を和らげた。
「……君は、優しい人だね」
見返されて、少し照れてしまった。罪な男ね。
「あなた、お名前は?」
「ジュレン。ジュレン・ナスターシャだ」
「私はアイサ。よろしくね、ジュレン」
同じ16歳。でも私とは違う、はるか北方の寒冷地で育った彼。長い付き合いになりそう。いや、なってほしいなと願った。




