第11話 ドンッ!
王様が手を大きく挙げた、次の瞬間
――ズゴゴゴゴゴゴ!!
「な、何!?」
鼓膜を破るような轟音とともに、足元の荒野が真っ二つに割れて、巨大な地下への階段がその黒い口を開ける。モーセかよって心の中でツッコんだ。
「全員進め! 拒否はさせんぞ」
振り返れば、みんなが乗っていた馬車はすでに消え失せてる。その代わりに完全武装の兵士たちが無表情のまま壁を作っていた。逃げ道なんて、どこにもない。
私たちは沈黙したまま、ぽっかりと開いた地下への階段を降りるしかなかった。恐怖のせいで感覚が麻痺し、下る時間はまるで永遠のように感じた。やがて辿り着いたのは、広大な地下空間。
そこであの男、この国の王がニヤリと嗤った。
「さて、殺し合え。まずは半数までだ」
「なっ……」
みんなが息を呑み、「なんてな」って笑い飛ばしてくれるのを待っていた。けれど、当の本人にそんな気配は微塵もない。張り詰めた空気の中、集団の中から一人の少女が進み出た。
「わ、私は関係ありませんよね!? ソレウムの隣国、アーセナルの第一王女ですよ! 私は特別のはずです」
アーセナルは田舎者の私でも知ってる。帝国ソレウムの次に大きい国。軍事開発が盛んで、戦争にはめっぽう強い。
「ほう」
案外、まともな判断力や人の心は残っているのかも。王は少し考える。
「そうだな、姫君。貴女は特別扱いしよう」
「そうですよね! うふふっ」
あ、ズルい。私も後で言おう。実子だとわかったら、例外にしてくれるでしょう。
「さあ、お手を拝借させていただこう」
「ええ、お父様」
……え? 今、あの娘、お父様って呼んだ?
「ここがあなたのお席です」
「……席? ただの穴じゃ?」
ドンッ!
「いやああああっ!!」
父は一切のためらいなく、アーセナル王女を蹴り落とした。絶叫が闇へと吸い込まれていく。
「おめでとう、姫君! あなたは選ばれましたぞ!」
穴へ向かってそう叫ぶ王。どうして、そんなに楽しそうに笑えるの?
「敗北者、つまりは奴隷にな! 底で何日生きられるだろうな、愚か者め!」
私も周囲の子供たちも、夢なら覚めてくれと何度も瞬きを繰り返した。けれど、絶望的な現実は何も変わってくれやしない。




