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第10話 ゴリラは強い

「あの子達は一体? どうして私と同じ家紋入りの馬車なの?」

 兵士は何も答えない。そのまま馬車は華やかな帝都を抜け、草一本生えていない赤茶けた荒野へと乗り入れた。乾いた風が吹き荒れ、口の中がじゃりっと砂を噛む。

「ではな、武運を祈る。哀れな姫君よ」

「はい!? 武運って何?」

 兵士は私をひび割れた大地に降ろすなり、馬車は鮮やかなUターンをキメて去っていった。

「……見渡す限りの地平線ね。私、ここで何させられるの?」

 集められた子供たちの多くは、思わず目を奪われるほど整った容姿をしている。でも、よく見ると目の形、鼻筋、骨格。髪や肌の色はバラバラなのに、みんな、気味が悪いほど同じ顔のベースをしているのだ。

「よく来たな!」

 ビリビリと大気を震わせる野太い声。地響きを立てて土煙の奥から歩いてきたのは私の父、皇帝トラヒムだ。会ったことはなくても、本能レベルで理解した。

「金髪のゴリラだわ……」

 熊のような巨体に、丸太のような腕。凛々しいお顔と、見事なまでに割れたアゴ。高級な分厚い毛皮と宝石を身に着けており、まるで海賊だ。立っているだけで呼吸が苦しくなるような圧倒的な暴君の空気を放っている。

「私と決闘させろ!」

 重苦しい威圧感を切り裂くように、澄んだ声が響いた。天使か神か、もしもこの世にいるのならこんな顔をしているのだろう。透き通るような色白の金髪美少年。美しい宝石のような青色の瞳を、燃えるような憎悪で歪ませて、王に向かってブチギレる。

「ほう、活きがいいのは悪くない。だが、私がお前と戦う利点がない」

「知るか! ここで死ぬ奴に、そんなもの必要ない!」

 少年の叫びに、王は鼻を鳴らしてニンマリと口角を上げた。

「ふむ、機会は恵んでやるか。ついてこい」

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