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アメイジング・ライスマン  作者: 地空乃いいちこ


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10/11

たまには冒険するライスマン

 街道をある程度進み、指定された標石を確認して森に入る。定期的に伐採組が切っているはずなのに、成長の早い背の低い木が茂っている。ナタで乱暴に切り払いながら|標石≪しるべいし≫の周りを除草していく。


「ギルドで公開されている地図にさ、何番街道の何番目の道標とか全部に番号が振ってあるの、これ真面目に凄い事だよな」

「普通の事じゃないのか? これないと今どこにいるのかとか、わからないじゃないか?」


 キョトンとするグレイステップ。

 普通か。魔物のいるこの世界で、日本だったら当たり前の区画整理をしてる事の凄さ。転生者じゃないと逆にわからないのかもしれないな。

 今いるココは異世界だ。剣と魔法のファンタジーな世界で、森を切り拓いて街道を作り、番号を振って管理してる。それを「普通」と思わせるほど普及させた。


「凄いよな。こういうの作り上げた苦労には頭が下がる」


 この制度は車輪ギルドと道の神の神殿が協力して作り上げたものだとか。測量技術も発達してないだろうに。


「いや? 登録した魔力の方向と距離がわかる魔法があるから、それを使って設置していくらしいぜ。俺には使えないから、まあ大変なのかもだけど。見習い魔法使いのいい小銭稼ぎになるらしい」

「魔法で解決かよ! 」


 感動して損した! そうだよ、剣と魔法の世界だったよ!

 とはいえ、普段からエリア単位で点検して、魔物が居ない事や異常がない事をギルド員が確認して、ようやく安全な通行が担保できている。そうして作った安全な経路の載った地図を無料で配ってくっれるのは本当にありがたい。


 ちなみに、この世界で「荷物をよこせ!」みたいな盗賊っていうのは殆どいない。なぜなら山や森の中に住むリスクが高いから。

 かわりに盗賊は宿場町や村の中に出る。そこの住人が悪さをするっていうわけだ。悪さをさせない為にも、ある程度の自衛力がある事を示すためにデカい武器をぶら下げて歩く事は安全の為にも推奨されている。俺みたいな非武装のソロ移動者なんてのは一番危険だろうな。だから俺は顔なじみの宿以外には泊まらないようにしている。金持っているようには見えないはずなんだけど、それでも隙があれば魔が差すらしい。巡礼者なんてどれくらい被害が出ているのやら。


「ここに足跡がある。四体以上だな」

「この凹んでいる所かい?」

「ああ。あとこの草の茎が折れているだろう。踏まれた跡だ」


 追跡者資格もいつか取りたいとは思っているので、グレイステップの指さすあたりを真面目に観察する。全然わからない。


「じゃ、この足跡を追ってみるかい」

「目撃されたのもこの辺らしいからな、万が一の罠だけ気を付けておいてくれ。

……でな、俺たちの売りに来た遺物はな、よく出土する光の剣だったんだがかなりデカいヤツでな。抱えるほどの大きさだったんだ。どうやって古代人はあんなの振ってたんだか」

「おいおい、話ながらで大丈夫なのかよ。音とかも聞くんじゃないのか?」

「大丈夫だよ、ゴブリンは喉の奥を震わせるギャギャって鳴き声で会話してるんだ。あいつら小さな声出せないんだよ。でも、落とし穴とか草結びとか作る知恵くらいはあるから、気を付けるのはそこだけだ」


 調査と退治に関してはベテランって言う話だけど、本当に大丈夫なんだろうな?


 聞き手としては少々面倒くさいが、二人が自慢話に夢中になるのも仕方ないと言えば仕方ない。何しろ、一山当てたのだ。一生食うに困らないという程ではないにしろ、日本人の感覚で言えば新車がポンと買える程の金額を宝くじで当てたような感覚だろうか。

 彼らの見つけた『遺物』とは、未知の領域で時折見つかる古代遺跡から発掘される工業製品らしきものだ。かなり丈夫なようで、まだ動くものも多い。特徴的なのは魔力以外のなんらかの力で動いているという事。貴族の蒐集品として、研究対象として、そして武器として高額で売買されている。

 だが、古代遺跡はコメドゥコーロ王国ではあまり見つからない。王国は湿地帯の多い低地なのだ。古代遺跡は浮遊島を含めてだいたい高い所にある。隣国の神聖ハイランド帝国はその名の通り標高が高い。

 俺は古代遺跡より米の育つ環境を選んだというわけだ。


 そしてハイランド帝国は太陽神と大地の女神への信仰心を目に見える形にしようと、太陽と大地をつなぐ高い高い塔を建てた。そんなの、バベルの塔みたいになるんじゃないかと思うんだが、この世界にはそういう神話は無いのでそのまま山より高い塔が建てられて……そして浮遊しながら移動していた空中都市がぶつかったらしい。崩落した部分も多かったらしいが、直接手つかずの古代遺跡であった空中都市に乗り込めるようになり、大量の遺物を手に入れたというわけだ。ゴールドラッシュだな。


 しかし、残念なのがここからだ。

 空中都市で大量の遺物と共に古い書籍をたくさん手に入れたハイランド帝国はこれを解読したのだが、古代文明は神を捕えて何らかのエネルギーとして使おうとした結果、神に滅ぼされたという記録が見つかった。

『古代文明は神に弓ひくものであった』この事実は信仰心の高い宗教国家であるハイランド帝国では許されない物だ。古代文明の遺物の使用は忌避されるものとなり、遺物の売買も表向き出来なくなったのだとか。だから、ハイランド帝国で遺物を見つけた冒険者は何とかして持ち出して他の国で売ろうとする。帝国は帝国で、理由をつけてご禁制の品を取り上げようとするらしいが。


「おい、見ろ。穴があるぞ」


 ブラニクの指さす方向を見てみると、山肌のツタに覆われた斜面にぽっかりと人が入れそうな穴が開いているのが見える。


「足跡はあっちに続いてる。当たりだな」

「ギルドの地図にはあんなの無かったよな。あいつら掘りやがったな?」

「数が増えると木の枝とかで家を建てるらしいからな。穴倉に籠ってるうちはそんなに増えてないんだろう」

「逆に言えば繁殖期って事だろう。さっさと処分しないと一気に増えるぞ」


 ブラニクは背負った大盾を構えると先頭に。その後ろに弓を構えたグレイステップ。俺はたいまつに火をつけて高く掲げて光源になると同時に、二人に何かがあった時には巣穴の場所と数を報告する為に最後尾で逃げる準備をする。そういう仕事だ。全滅して情報が伝わらないのが一番ヤバいんだから、これも立派な役割。


「いくぞ」


 ブラニクがたいまつを巣穴の中に投げ込む。


「罠、無し!」


 短めの剣でギリギリ、槍は振り回せないほどの狭い洞窟。左の壁に沿うように盾を構えたブラニクが進む。

 投げられたたいまつの灯に照らされて、蔦を寄った紐に繋がれた山羊が見える。その周囲に4体のしわくちゃな小人。ゴブリンで間違いない。


「ギャッギャッ」「ギャギャー!」


 火を恐れての叫び声なのか戦いの雄たけびなのか、狭い洞窟内にワンワンと反響する。


「入ってすぐの所にいるのか、よっ!」


 ブラニクは右手の剣を大きく振り回して、後ろにゴブリンを通さない。木の棒を振り回すゴブリンどもに盾を叩きつける様にして抑え込む。


「楽でいいじゃないか」


 そしてグレイステップが次々に右側に寄ったゴブリンに矢を放ち、あっという間に戦闘が終了した。頭、頭、胴体、脚と肩。向かってきた三体は一発で。逃げようとした四体目に二発を当てている。良い腕してるわ。

 急いで報告に行く必要もなくなったので、脚を射抜かれて転倒したゴブリンにサッと近寄ると、速やかに首を刎ねた。


「生きてるのが二体以上いたら、とどめを刺す前に脚とかを切っておくといいぞ。暴れると危ないからな」

「手負いは特に視界からはずさないようにな」


 さっきまで本当にベテランか疑っててゴメン。手練れてるわ。


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