声の寿命は数十秒
僕は昔から何にでも興味を持ちすぐ投げ捨てるような人生を送ってきた。だからすぐ忘れるし、すぐ覚える。なんでもすぐに容量が空いたらまた新しいものを探す。だから迷いなんてしない、緊張して喉が閉まるような感覚のようなものは感じたことない幻のようなものだ。でも突然、僕の体の全てから恥ずかしい声が漏れ出してしまうように興奮してしまった。だってそこには僕のずっと好きだった人の腑抜けるようないやらしい声が響いていた。こんないやらしい話も元からするつもりはなかった。だけど今これもいつものくせ。そう、また軽々しく言ってしまった。これもすぐ忘れるだろう。なのにあの声だけは忘れられない。頭から離れない。僕の拙い脳みそでは伝えようのないあの恐怖心をも煽るような危険な声。どうせすぐに忘れてしまう。だけど後数十秒だけでも聴いていたい。そうだ、あの子のところに行って聞かせてもらおう!もっと近いところで。
これは僕が初めて性を感じた日だった。でもあまりにも危険すぎたようで、僕はもうまともに聴くことができない。だって僕の耳は切り落とされていたから。じゃあ僕が聞いていたものはなんだろう。あゝそっか、あの子の悲鳴かでも切り落とされてるから聞こえないはずじゃ?でもそう思った瞬間にはもう遅かった。血が顔の側面から流れ出てくる感覚が蘇る。それと同時に再び無慈悲に繰り返すことだった。またいつもの癖で、、何も言葉を発さずにいたら忘れてしまった。数十秒の瞬間にはもう頭の中から消えていた声。これは一体誰の声なんだろう。今自分は何をしてるのか?なにがあったの?どうしたんだろう?あれ?電気が消えたのかな?周りが真っ暗だ。どんどんどんどん語感が塞がれて行く。でも忘れたくなかった。四肢を犠牲にしたって聞きたかったあの声を忘れてしまった。
またいつもの悪い癖が出てしまった
“声の寿命は数十秒”